単球再生式ラジオキット(1RW−DX)製作記
NPO法人ラジオ少年 原 恒夫
1 はじめに
ラジオやアンプの製作の構想は、調達可能なパーツを考えながら設計し、製作に入ります。今回のこの小さな「単球再生式ラジオ」は、その反対で、手持ちパーツを有効に生かして、1台のラジオを作ろうということになりました。その手持ちパーツのメインパーツは、6AB8という3極、5極の複合管です。この複合管は、ヒーター電圧6.3Vの0.3Aという省電力です。そして、5極管の方は180Vの電圧をかけると1.4Wも出力が出るとのことです。ただ、カソードが共通ということで、使いにくい球とも言えます。しかし、本会頒布の3球スーパーラジオキット(3S−STD)に6AB8を採用したところ、なかなか良い球ではありませんか。
今回は、この6AB8をメインとして、単級再生式ラジオを製作してみました。フロントパネルも付け、小型のスピーカーも取り付けました。
2 回路と製作
回路は、3極部を再生検波部に使い、5極部を低周波増幅として使いました。バーアンテナを使って、アンテナなしでもローカルの放送が聴けるようと考えました。再生調節用のバリコンは、親子ポリバリコンの親側(120pF)を使っています。子側(70pF)では、周波数の低い方で再生のかかり方がやや不足気味でしたので、親側を使っています。バーアンテナでも感度不足を補うため同調コイルのG端子から小容量のコンデンサーで短いアンテナ線をつけることが出来るようアンテナ端子はつけてあります。そのため1m程度のリード線をアンテナ端子につけると結構感度が上がります。本格的に長いアンテナを付ける方はバーアンテナの同調コイルの上に2〜3ターンのアンテナコイルを巻くと良いでしょう。
小型とはいえ、4mHの高周波チョークと100Hの低周波チョークを贅沢に使った回路で、高感度をねらっています。
製作は、主なパーツをシャーシーに取り付けます。プラスチックパネルは、ビスナットをあまり強く締め付けるとひびが入るますので注意が必要です。トランス、チョーク、
出力トランス、真空管ソケットなどは端子やリード線の方向に気をつけて取り付けます。
単球式とはいえ、アース母線はしっかりと張り回しておきます。注意するところは、バリコンをプラスチックパネルに取り付けていますから、バリコンはアースされていません。必ずバリコンのアースを取るようにします。
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主役の6AB8 | トランスは小型のものを使います | バリコンのアースをお忘れなく |
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アース母線は、しっかりと引き回します |
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配線の終わったシャーシ内面 |
3 おわりに
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シャーシーのサイズ幅15cm×奥行10cmと小型ラジオの完成 |
シャーシーの大きさは、15cm×10cmという手のひらサイズの単球ラジオの完成です。ローカル放送が一人で聞くには十分な音量で受信できます。1m位のビニール線のアンテナをつけるとずいぶん感度が上がります。この1mのアンテナで夜間になると遠くの放送も受信出来ます。パネルをプラスチックにしたことで、真空管のヒーターも見えますので、「真空管ラジオ」を楽しむことが出来ます。
再生のかかり具合はスムーズですが、再生コイルをもう1〜2ターン多く巻くと良いかもしてません。
単球とはいえ、真空管ラジオ製作の基礎的知識と製作の技術を持っていることが必要です。「単球=やさしい」とは必ずしも言えません。はじめて真空管ラジオを製作される方は、経験者からのアドバイスを受けることが必要です。