2球電池管ラジオキット製作記(2R−DC) 


ラジオ少年  原  恒 夫



1 はじめに

 話は古いのですが、すでに50年以上も前、筆者が小学生の頃の月刊誌「初歩のラジオ」の定番記事に1T4や3S4等の電池管を使った「電池管ラジオ」の製作記が掲載されていました。我が家にあった真空管はST管で、1T4等のMT管の大きさがまったくイメージできませんでした。記事の写真を見るだけで、はじめてMT管に出会えたのは、地方を巡回修理して歩くNHKの技術者の作業鞄の中から大事そうに取り出された小さな真空管がMT管だとわかりました。小学5年の時の出来事でした。
 しかし、その後実際にMT管を手に入れたのは、数年後で中学生になっていました。最初に手に入れたのは、街のラジオ屋さんで、TEN
(神戸工業)のもので、確か1000円だったと思います。筆者の小遣いの2ヶ月分のこの真空管とのつきあいはきわめて短いものでした。
早速1.5Vの電池をつなぎフイラメントの光輝いている様子を楽しもうと思いましたが、居間ではまったく見えません。切れているのかとあわてて押し入れで、ガラスを透かすと一筋の赤い光がみえました。
 「これが、電池管の光か!」とえらく感激したものでした。
それから1T4を使った再生式ラジオの製作までにこぎ着けたのは、また、3ヶ月以上が経っていました。理由は簡単で、電池やバリコンなどのパーツを買う小遣いがたまらなかったからです。
 やっと全部のパーツがそろい、徹夜で組み立て朝方に完成、眠い目をこすりながら電源スイッチを入れましたが、全く受信できません。本に書いてあるように、グリッドにドライバーでさわっても「カリッ」ともいいません。原因は、わかりました。B電池22.5Vを接続したまま配線の点検をしていたので、ドライバーでさわたったり、ピンセットでひっぱたりした際に、B+がフイラメント回路にかかり瞬間的にフイラメントが切れていたのです。
 そんな思い出のある1T4ですが、ここでは、更にもう1球1U4で増幅し、実用的なイヤホンタイプの電池管ラジオを作ってみました。

 電池管ラジオの製作時の注意といて
(1)電池管のフイラメントは弱いので、高い電圧をかけると瞬時に切れます。真空管をさす前にソケットのフイラメントピンの電圧を測定し て、1.4〜1.5 Vがかかっていることを必ず確認します。
(2)電池、真空管をつけてからの点検等は、金属製のドライバー、ピンセットなどを使わない。

を学習しました。


2 2球電池管ラジオの製作

 回路は、1T4で再生検波、そして、1U4で低周波増幅としています。再生検波管の1T4のプレート負荷は、小型の50Hのチョークを使用し、1T4のプレートに出来る限り高い電圧を供給するようにしています。そして、1U4で低周波増幅しクリスタルイヤホンをならしています。バーアンテナ、バリコン、真空管の部分をユニット化していますユニット部分のシャーシーは、もっと2本の真空管の間隔を狭くしたりして小型に出来ますが、初心者の方の製作を考慮し、大きめに作ってあります。
 当初、片切りのスイッチ付きの再生用ボリュームを使い、A電池だけ切っていました。念のためスイッチを切った状態でB電池の電流を測定してみましたところ、常時20μA〜30μAの電流が流れていることがわかりした。原因は、再生調節用の1MΩのボリュウームが、B+とアースの間に入っているためです。1T4のスクーリン電圧を0Vから大きく変化させるには、やはりこの接続がよく、そうかと言って、電源を切った状態でわずかでも電流が流れているのは、気分が良くありません。双極スイッチの付いたボリュームは、入手不可能ですので、やむなく別の双極のトグルスイッチを付け、A電池も、B電池も切るようにしました。

 製作は、まずシャーシーのビニールシートを取り除きます。そして、7ピンMTソケット、ポリバリコン、1MΩのボリューム、バーアンテナんどの主要部品を取り付けます。MTソケットは、センターピンがあると手狭なシャーシーの中では配線しずらく、外してあります。50HのチョークのB+に行くリード線は、短いので、あらかじめ7〜8cm位のビニール被服線を半田付けしてからシャーシーに取り付けます。

     
 両面のビニールシートをはがします 主役の1T4と1U4  特注で作ったバーアンテナスタンド
     
主要部品を取り付けます   アース母線を張り回します 50Hのチョークの片側にリード線を
付けておきます 

 主要部品を取り付けましたらアース母線を張り回します。

 配線は、どこから始めてても良いのですが、同調回路から順次イヤホンまで配線すると良いでしょう。とにかく狭い場所ですから、ショートしないようエンパイヤチューブをかぶせるなどしながら慎重にすすめます。真空管ソケットのピンの使っていないNC(真空管内部でもつながっていない端子)を中継端子として有効に使っても良いでしょう。

 
  部品点数が少ないのですが、とにかく狭いので慎重な配線が必要です


 電源スイッチの配線、ケース加工、ケースへの組み込みで完成となります。一応配線が完了したら、A電池、B電池を取り付け、真空管ソケットのフイラメント(1番ピン、7番ピン)に所定の1.4〜1.5Vがかかっていることを確認し、その後、一度電源スイッチを切り、真空管を差し込みます。
 真空管を差し、電源を入れ、1U4のグリッドにドライバーなどを触れると、カリカリとかブーンとか音が出るので、動作していることが確認出来ます。

 調整は、特にありませんが、ボリュームを回しスクーリングリッドの電圧を上げても再生がかからない時は、再生コイルの配線を入れ替えてみます。再生がかかればOKです。強い局は問題なく受信できますが、弱い局の同調は結構面倒です。注意しながら同調ダイヤルを回すと、ビート音が聞こえます。このビート音のあるところが電波のあるところで、再生ボリュウームと同調つまみをゆっくり回すと放送が受かるところがあります。
 高い周波数の放送が受信出来ない時は、ポリバリコンのトリーマーの容量を小さくしてください。低い放送の受信が出来ない時は、バーアンテナのコイルの位置を中央の位置に動かし、コイルの容量を大きくします。


3 終わりに
 
 筆者の製作例を書きましたが、キットはすでにシャシーの穴あけ加工がしてありますから部品配置の自由度は少ないのですが、CRの位置などは、製作された方の個性を生かして下さい。
 +Bは、9V×4個=36V をかけていますが、2本の18Vから再生がかかり受信できますが、やはりB+が高いほど高感度でかつ音量も大きくなります。+Bの電流は思ったより少なく800μA程度ですから、B電池は相当長持ちします。
 A電池は、100mA流れていますから単二で40〜50時間程度使用出来ると思います。

 小型にするには、小さな電池を使用することですが、最近単五電池サイズで12Vの23AEという型番のものが出回っています。B電池に23AE電池を2〜3本とA電池に単三を使うとかなり小型に仕上げることが出来そうです。

 「ラジオ少年」の事務所は、鉄筋コンクリート造りなので、それほど大きな音量では、受信出来ませんでした。しかし、筆者の家に持ち帰り(筆者の家は、木造)受信して驚きました。クリスタルイヤホンが壊れんばかり大きな音量で受信出来ました。耳が痛くなるほどの大音量には驚いてしまいました。音量は、再生ボリュームで調整出来、また、バーアンテナの向きでも調整出来ます。音量調節ボリュームは、あった方が良いのですが、なくてもなんとかなりそうです。

 ベッドサイドにこのラジオを置いて、深夜にスイッチを入れてみました。驚きました。強い札幌の放送局の間には、無数の遠くの放送が聞こえるではありませんか。日本の放送に混じり、韓国、中国の放送も聞こえています。さらに気がついたのは、適当な再生をかけると混信していた強力な札幌の局が聞こえなくなくなり、弱い本州の局が分離して聞こえるのです。つまり、再生を適度のかけると感度も選択度も良くなるのです。スーパーヘテロダイン方式のように無調整で常時最良の感度と選択度を維持出来るわけではありませんが、じっくり調整するとスーパーヘテロダイン方式に劣らない感度と選択度を得られることに、「再生式」に今更ながら感激しました。


 *市販のA23AEの12V電池は、ホームセンターでアルカリタイプが1本500円前後で売られています。

 
        左 23AE型12V電池  右は単三電池です