3球高一ゲルマ検波ラジオの製作
原 恒 夫
1 はじめに
再生式検波ラジオは、確かに高感度ですが、音質的にはやや不満が残ります。高感度で音質の良いラジオの製作をめざして、高周波増幅回路を付け、ゲルマニュウムダイオードで検波した音質重視の3球ラジオの製作を紹介します。
2 高周波増幅回路
高周波増幅をすれば感度は良くなることは当然ですが、「発振」という「トラブル」の発生が心配されます。また、同調回路を2段とするため同じ容量の2連バリコンや段間のコイルが必要になります。ここでは、今でも比較的入手の容易なAM・FM用2連バリコンのAM側を使い、また、段間のコイルはアメリカの通販会社のコイルを使って高周波増幅回路付きでゲルマ検波の音の良い3球ラジオを製作します。
高周波増幅するため発振しやすいので、アンテナコイルと段間のコイルはシャーシの上と下に配置してシールドをしっかりして、入力回路と出力回路が結合しないよう配慮をしています。
3 使用部品
◎バリコン 今でも入手の可能なAM・FM用2連バリコンを使 います。AMの部分の350pFの2セクションを使います。 2連バリコンの前セクションを6BA6/5749のプレート側の同調に使い、後ろセクションをバーアンテナの同調用に使いました。各コイルまでの配線の距離を考えて決めています。
◎アンテコイル 外部アンテナを付けなくても高感度なラジオを作るため長さ140mmのバーアンテナを使っています。外部アンテナを付けるために数ターンのアンテナコイルを巻いています。
◎段間コイル 高周波増幅管のプレート負荷コイルは、約2mHの容量があり、二次側コイルは、350pFのバリコンでBC帯をカバーできるようにします。幸いアメリカの通販会社にぴったりの段間コイルを見つけましたので使いました。このコイルはコア入りで小型で同調周波数も自由に変えられるものです。
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AM・FM2連バリコン | 大型のバーアンテナ | アメリカ製の段間コイル |
◎ 高周波増幅管
6BA6、6BD6、6AK5などの高周波増幅管が使えます。本キットでは、6BA6/5749を使いました。感度を調節するため高周波増幅管のカソード抵抗を切換て強力なローカル局の受信の場合と遠くの弱い局を受信する場合に対応するため感度切換スイッチを設けています。
連続的に感度を変えたい場合は、5〜10kΩB型のボリュウムにします。
◎検波用ゲルマニュウムダイオード
今でも入手可能なゲルマニュウムダイオード1N60を使いました。
◎低周波増幅
6AV6を使いました。この球にこだわらず、低周波増幅用の3極管であればなんでも使用できます。
◎電力増幅管
6AK6を使いました。
4 回路と部品配置
高周波増幅回路は、入力回路と出力回路が結合して、発振してしまう危険があります。できるだけ結合しないように細心の注意をしながら部品配置をします。アンテナコイルと段間のコイルはシャーシの同じ面に置いてはいけません。結合して発振して手に負えなくなります。ここでは、アンテナコイル(バーアンテナ)はシャーシの上、段間コイルはシャーシの下に配置しています。
5 配 線
とにかく高周波増幅回路が結合しないよう細心の注意をして配線します。低周波増幅回路は特に難しくなく、標準的な回路となっています。
配線の順番は
(1)アース母線の張り回し
(2)真空管のセンターピンのアース
(3)ヒータの配線
(4)電源回路の配線
(5)低周波増幅回路の配線
(6)高周波増幅回路と検波回路の配線
と進みます。
シャーシ裏の配線の様子
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6 調 整
すべての配線が終わりましたら電源スイッチをONにして、各部の電圧をチェックします。調整しなくともローカルの局が良い音で入って来ることでしょう。やはり再生検波回路とは違う柔らかくてそして高域ののびのある音は、ホームラジオとして期待どうりです。
低い周波数の放送を受信してアンテナコイル(バーアンテナ)のコイルを動かし、最高の感度になるように調整します。段間のコイルのコアも回して最高感度になるように調整します。コアは、2.6mmの6角のコアドライバーを使います。マイナスドライバーなどでコアを回すと、コアが割れて使用不能になりますから注意が必要です。
次に高い周波数の放送を受信して、アンテナコイル側のバリコンのトリマと段間側のトリマを交互に回して最高感度になるように調整をします。ラジオの感度はどうしても低い周波数の方が悪いので、感度調整は低い周波数を優先します。
7 おわりに
このラジオでは、同調回路が高周波増幅回路と段間と2段に入っています。しかし、スーパーヘテロダイン方式のようにIFTの同調回路を含め同調回路が5段も入っているとでは選択度に開きがあります。ローカルの強力な放送は100kHzを分離できる程度です。50kHz位しか離れていない局同士は混信します。しかし、IFTのような帯域6kHzというような狭いフイルタが入っていないので、確かに音は良く特に高域ののびはすばらしいものです。「AM放送はこんなにいい音だったのか!」と感激することでしょう。