12V管を使った4球スーパーラジオ製作記

NPO法人ラジオ少年  原  恒 夫

 

1 はじめに 
   真空管を動作させるには、高圧電源が必要というのは常識ですが、真空管時代が終わろうとしたころに発売されたのがバッテリーの電源でヒーターもプレート電圧も12Vや24Vで動作するという真空管です。しかし、すぐトランジスター時代に突入し、使用されたのは短い期間だったようです。電池管でもプレートには45Vや67.5Vの高い電圧をかけなければ動作しませんが、ヒターもプレート電圧も12Vや24Vで動作する真空管があったのです。
 筆者は、何年も前からこの12V管を使ったラジオを作ってみたいと思っていましたが、今回やっと実際に使ってみることが出来ました。ヒーターも12V、プレート電圧も12Vで動作する真空管ラジオを作ってみませんか。
 出力管の12K5の規格をみますとプレートに12V近くをかけて40mW出力とのこと、実用になる音量は得られるのでしょうか。


2 回路は標準のスーパーの回路使用
  B電圧が12Vだからと言って特別な回路ではなく、標準の回路が使えます。B電源が12VなのでIFTにはトランジスター用のものを使ってみました。後で、選択度の良い真空管ラジオ用IFTも使えるように、トランジスター用IFTにはプリント基板のマウントをつくりシャーシー22mm角の真空管用IFTの取り付け穴に合わせてあります。

   
  補助の基板を作りました  シャーシーの穴は22mm角のIFT用です


 
アース母線をしっかりはります 
 
電圧を調整する抵抗も数が少ないです 
 
背面からの様子です

 バリコンは、前面のプラスチックパネルに取り付けるため、バリコンのアースは忘れないようにします。


3 終わりに
 
CR類が少ないので、配線作業は短時間で終わります。B+とヒター電圧が同じ12Vというのは、どうも不自然ですがそのように配線します。誤配線がないか調べ間違いがなければACアダプターからDC12Vを入れてみます。最初に使ったACアダプターは小型のスイッチング方式のアダプターでしたが、受信周波数のはじからはじまで一杯ビートやノイズが出てしまいました。それで、スイッチング方式のアダプターは使えないことがわかりましたが、40mWの音量は結構うるさいほどでした。

 ジャンクボックスを探し、トランス式の12Vの出るアダプターをつけてみました。ノイズやビートはなくなり静かに受信できるようになりました。そこでテストオシッレッターから455Khzを出し、二つのIFTを調整します。540〜1600kHzまで受信出来るようトラッキング調整をすませ、早速放送を受信してみます。
 感度は普通5球スーパーよりはやや低いようですが、音量は結構あります。2メートルくらい離れても十分な音量です。音質は、低域は結構出ているようですが、高域はあまり出ていないようです。12K5のカソード抵抗やバイパスコンデンサーを変えたり、電池を使って固定バイアスをかけてみたりしましたが、音量と音質の変化は殆どなく、結局12K5のカソードはまっすぐアースすることにしました。

 IFTはトラジスター用を使用しましたが、札幌においてはローカル局の混信もなく受信出来ています。東京のように放送局の多いところでは標準の真空管用IFTを使われることをおすすめします。

いつかは作ってみたいと思っていた12V管のラジオが完成しました。

 備考  12Vのトランス式AC−DCアダプターは、小型に作るため平滑のコンデンサーは小容量のものしか内蔵していないようです。そのためハムが気になります。ハムを取るには、12Vラインに16V以上の3000μF〜5000μFの電解コンデンサーを入れて下さい。