4球スーパー スタンダードキット製作記
ラジオ少年  原 恒夫


キット頒布まで

1 キットの基本構想
  ラジオ製作の技術レベルとしては、中級以上の技術力が必要ですが、ストレート受信機と違って、感度も選択度も良く実用的です。
真空管スーパーラジオキットの構想が持ち上がったのは1年以上も前のことでした。「ラジオ少年」の役員の皆さんが時代差はあっても必ず何台かの真空管式スーパーラジオを作って楽しんで来たからです。もう役員の皆さんの心は少年時代に戻っていました。でも今の時代に真空管ラジオを作るのは極めて難しいことだと皆が思っていました。、しかし「元ラジオ少年」の気持はもう固まっていました。そうです。「青少年の皆さんに作らせたい」という思いです。勿論、作ったことのある方、作ろうと思っていても時間や経費の関係で出来なかった「元青少年」の方に作っていただくのも大いに結構だと思います。
 構想のまとめです。
(1)とにかく青少年の皆さんがお年玉やお小遣いを貯めて購入出来る範囲の予算で出来ること。
(2)工具などを持たない人でも作りやすいように穴あきシャーシーとする。
(3)部品は真空管はじめ主要部品からビスナット1個までの完全キットとする。
(4)スーパーラジオの仕組みを理解しやすくするため回路や使用部品は、標準的なものを採用すること。
(5)将来において横行ダイヤルやキャビネットなど作りも楽しめる構想を持つ。
などが出されました。

2 部品の調達
  構想に基づいて部品集めを開始しました。パーツを日本国内から調達するとどうしても3万円以上になり、すべてを海外市場から調達する事になりました。第一ロットとして100セットを目標に部品を集めましたが、これが実に大変な数であることがわかりました。アメリカの大手の通販会社でも、同一パーツを100個ずつ注文すると、どこも在庫がないとのことです。やむなく数社に分散してオーダーを開始しました。トランス類は、「ラジオ少年」の取引先、「タイ トランス社」で問題なく引き受けてくれました。しかし、重量のかさむトランス類のエアーカーゴの運賃の高さには驚いてしまいました。
 特注は、ベークライトボビンも専門工場に直接注文してこちらの仕様通りに作ってもらいました。この種のパイプは、注文してから生産するのだそうで時間がかかりました。シャーシーもコンピュータ制御の金属加工機械で設計通りの物を作ってもらうことができました。最も心配したIFTや親子エアーバリコンも手に入り計画は一歩一歩進みました。

3 試作
 平成16年1月から試作機を作り、再現性などについて繰り返し実験を重ねました。特にOSCコイルは、国内外を捜してもなかなか製作してもらえる会社が見つからずトロイダルコアで開発品を使うことになりました。真空管の中で、ポピュラーな低周波出力の6AR5は1本10ドル以上と高価でした。その為、基本構想の「標準品」という理想か外れるのですが価格の安い6AK6を採用する事にないました。1Wは出せるようなので実用的には問題が無いようです。整流管も経費削減のためシリコンダイオードになりました。そんな訳で、6BE6、6BA6、6AV6、6AK6という構成にに落ち着きました。

4 キット完成
  構想から1年4ヶ月ほどかかってやっとキットとして頒布出来るまで準備が進みました。頒布価格の設定も役員の皆さんの様々な意見が出ましたが、基本構想に従い理想に近い価格設定ができたのではないかと私達は満足しています。「キット」頒布の難しさも分かりました。ねじ1本足りなくとも頒布を開始出来ないのです。


 パーツ紹介

主要部品の紹介(メーカーは、異なる事があります)
穴あきシャーシー(100mm×300mm×40mm
パーツセット 電解コンデンサー(11月15日から立型になりました)
配線セット スピーカー(100mm)
アンテナコイル(巻いてあります) OSCコイルキット(20回巻くだけで完成)
CRセット ビスナット、ラグ板セット
真空管(左端はDXタイプ用の6AQ5A) ラグ板は切って使います
OUTトランス IFT
親子バリコン(290pF+120pF)


 キット製作記

1 部品をシャーシーに載せる
  まず主要部品をシャーシーに取り付けてみましょう。
向きに注意する部品
□真空管ソケットはピン方向
□IFTは、6BE6の後ろがT−3、6BA6の後ろがT−4です。端子の方向も確認して下さい。プレートからPへ、B+がB、次の真空管のグリッドへいくのがG、AVC回路へ行くのがEです。
□電源トランス 高圧の250Vの出ている方を感電防止のために内側にします。
□アウトプットトランス 6AK6の方を一次側(0,5k,7k側)に向けます。
□バリコンの取り付け金具 このL金具は、とりあえずはどちらが前でもかまいません。バリコンの取り付けは、長さ5mmのビスで取り付けて下さい。長い8mmビスで止めるとバリコンの羽にぶつかりバリコンを壊してしまいますから注意が必要です。

ねじの締め付け
なるべむナットの方をナット回しで強く締め付けます。ワッシャは使っていませんがアルミシャーシーなので締め付けさえきちんとしていればゆるむことはないでしょう。
使うビスナットは、電源トランスだけが4mmで、他は3mmでなべねじです。

シャーシーに主要部品を取り付けます
 卵ラグとラグ板もみて下さい(後でOSCコイル用ラグ板1個を追加しました)


2 アースを配線する
  真空管ソケットのヒーターの片側とセンターピン、ラグ板、卵ラグ、電源トランスから整流回路へかけて錫メッキ線でアースラインを一回り配線します。ビスナットがゆるんでも完全にアースが取れるようにしておきましょう。真空管のセンターピンは、千枚通しのような先のとがったもので回して穴の方向を都合のよい方向に合わせましょう。

アース線の引き回し
電源周りのアース線の引き回しです(見えているのはOUTトランスです)
高周波段のアースの引き回しです


3 回路の配線
  シャーシーが穴あきのキットといいましても配線には個性が存分に出せます。必ずしもどこからという決まりはないのですが、私の配線手順例です。一応JIS5色で配線します。(キットには、5色のビニール単線、錫メッキ線が一通り入っています) 

 半田付けのコツは、付ける方も付けられる方も必ず先に「半田メッキ」をする事です。半田メッキとは、ラグ板や真空管、配線する線に先に半田を軽くつけて半田をなじませておくことです。半田は、中に入っているフラックスが熱を加えると煙となります。この煙が出終わった半田は、もう付かないのです。ですから、半田ゴテと半田を同時に付ける部分に持って行くことです。そして、半田ゴテの熱がラグ板などにしっかり伝わるよう有る程度力をかけてやり「1.2.3」と数えるつもりで押さえ続けます。こて先をすぐ離していけないのです。
 作っても動作しないラジオの99パーセントは、「天ぷら半田」という外見上は半田がついているように見えますが、実際には、天ぷらの衣のように完全に部品と線、部品と部品が付いて導通状態になっていないのです。

 また、実態配線図や誰かの作ったものを見ながら作るといつまでも回路図が読めませんし、部品の名前もわかりません。なんかわからない内に出来上がって「鳴った」では面白くもありません。配線図を見ながら、真空管の電極とピン番号を確認しながら配線するとメキメキ実力がつきます。配線さえ正しければ、線が長くても短くても、整然と部品がならんでいてもゴチャゴチャでもこの程度のラジオでは、なんの問題もおこりません。困るのは、部品がラグ端子などにきちんと付いていない「空中配線」は、振動で部品が動いてショートして煙が出てきたりします。そこまでいかなくとも鳴ったり鳴らなかったりトラブルのもとになります。

(1)ヒーター配線 6.3V 1Aのリード線  を近くにアース。 は、6AV6、6AB6、6BE6のヒーターに配線します。
(2)ヒーター配線 6.3V 0.5Aのリード線  を近くにアース。 は、6AK6のヒーターへ。
(3)電源トランスにヒューズホルダー、ボリュームのスイッチ、ACコードを付けます。

●交流電圧チェック AC100Vを入れて、ヒーター電圧や高圧を測ってみましょう。勿論交流です。6.3V(無負荷なので少し高い) 高圧は260V位出ています。

(4)電源B+側を配線します。ダイオード、電解コンデンサー周りまで配線します。  ダイオードは白い線が入っている方が+が出てくる方です。

●直流電圧チェック 電源スイッチを入れる前に念のためテスターの抵抗レンジで電解コンデンサーの+側とシャーシーの間の抵抗を測って見ましょう。殆どゼロオームに近いなんていうことがあればどこかでショートしています。数十kΩ以上あれば電源を入れます。すでに直流300V近くが出ていますから感電しないよう気をつけましょう。テスターの直流レンジで500V以上で電解コンデンサーのB+の電圧をはかってみます。無負荷ですから約300Vほど出ていれば電源部は成功です。電源スイッチを切っても電解コンデンサーに1分くらいは高圧が残っていますからさわると感電します。すぐ配線を続ける時は高圧回路をドライバーなどでショートして放電します。

(5)低周波部(6AV6、6AK6の周り)を配線します。  6AV6の検波部には、AGC回路がついていますのでCRが集中します。うまくラグ板を使って処理し空中配線がないようにします。6AK6は6AR5と少しピンが異なっています。6AK6のカソードに入れるコンデンサーは、極性に気をつけましょう。ボリュームへの配線は、シールド線を使うのがベストですが、距離が短いので単線で大丈夫です。
アウトプットトランスも配線して、スピーカーも端子につKれば、低周波部増幅部のテストが出来ます。

●低周波増幅部のテスト 6AV6と6AK6を差し込み電源を入れます。2本の真空管のヒーターが赤くつきましたか。スピーカーからわずかでもハム音が聞こえればまず配線は大丈夫でしょう。6AK6の1番ピンにドライバーやテスター棒でさわるとガリガリとかブーンとハム音がします。6AV6のグリッドに同じようにドライバーを付けるともっと大きなハム音がでれば低周波部は成功です。ボリュウームを時計方向に回すと音が小さくなる場合はボリューム端子のアースと入力を反対につなぎ変えます。6AK6、6AV6の各電極の電圧を測っておきましょう。

(6)中間波増幅回路の配線 6BA6周りの配線をしましょう。IFTの端子の接続は、IFTに入っている小さな説明書が入っています。もう一度IFTの取り付け方向を確認しましょう。

●6BA6の動作チェック 6BA6も差し込み電源を入れます。ヒーターは赤くつきましたか。各電極の電圧を測ります。プレートは100V以上、スカーリングリドは50V以上、カソードに0.5V程度あれば正常に動作しています。

(6)周波数変換部 6BE6周りです。

OSCコイル トロダルコアに22〜23回巻きます。 カソードタップは3回です。3回目のところの塗料をヤスリなどで磨き半田メッキしておき錫メッキ線で引き出します。コイルの巻き数は、最後に受信数周波数を確認しながらグリッド側を1ターンずつカットします。

アンテナコイル 5月5日以降発送分よりコイルを巻いたものを付属させました。290PFのバリコンに合うように300μHに作ってあります。

 バリコンへの配線、コイルの配線が終わればすべて配線は完了です。

●最後のチェック 6BE6を差し込み電源を入れます。6BE6のヒーターが点りましたか。配線が間違いなければ軽いノイズがスピーカーから聞こえます。ボリュウームを時計方向に回すとノイズが大きくなります。この未調整の段階でも近くの放送が聞こえて来ます。6BE6のプレート電圧は100V以上、スクーリン電圧は50V以上あれば正常です。ノイズも聞こえない、電圧も出ていないという場合は再度配線のチェックが必要です。

4 最 後 に
 標準的な6AR5に代わって、6AK6を使いましたが、これが結構迫力のある音が出てきます。決して6AR5にひけを取らない音量を確保しています。本機の心臓部であるOSCコイルですが、コイルの巻き数22回で再現性が抜群です。OSCコイルを取り付けるラグ板をバリコンの取り付けビスに固定してみました。6BE6から離れてしまうのですが、小さなシャーシーの中ですので、特に問題が有りませんでした。6BE6の近くにラグ板を立てるのがベストといえましょう。
 500kΩのボリュウムですが右端の穴に取り付けてもいいのですが、相当配線の距離が長くなるので、シールド線を使用した方が良いでしょう。ボリュウムのストッパーの穴は取り付け位置に注意しながらあけて下さい。
 IFTの調整は、必ず6角のコアドライバーを使う必要があります。マイナスドライバーなどで無理に回すとコアが割れて使えなくなってしまします。殆ど455kHzに合っており、コアは1回転以内で調整が出来ます。
 ダイヤル、ケースなどの加工をしますと実用的なホームラジオとなります。約250Vもの高圧がjかかっていますので、小さなお子さんのおられる家庭では、お子さんの手の触れないよう、感電事故のないよう安全な場所におくことが必要です。
 
参考写真

 

整流回路付近(中央はOUTトランス) 低周波回路付近
高周波回路付近

ダイヤルシールを貼ってみました 電源部分
               高周波部分                  低周波部分
          バリコン付近



シャーシー裏全体の写真

シャーシー裏面の拡大写真は、こちらです。拡大写真は約900kbあります。