5球スーパーラジオ製作記
原 恒 夫
1 はじめに
ストレートラジオと比べ、高感度、高安定度、そして選択度も格段に優れている「スーパーヘテロダイン方式」が日本の家庭に入ったのは、戦後の事です。私の家でスーパーラジオを購入したのは、昭和29年でした。父が大きな風呂敷に包んで持ち込まれた「スーパーヘテロダインラジオ」は、信じられないほど調整が簡単で、小学生の私にもどこの放送局をも受信出来ることが出来ました。夕方になるとほんの数メートルのアンテナでも東京の放送がガンガン入感しました。浪曲とニュースが一緒に聞こえた混信も全くないのです。
本キットは、当時の5球スーパーを完全復元しました。
2 回 路
全くスタンダードな回路です。回路は、なんの特徴のないスタンダードな回路ですが、実はこの「スタンダード」な回路にたどり着くまで先達の皆様が様々な研究をされ、簡素でかつ高感度、高安定度の性能を引き出しています。そのため、回路のCRの定数などもあまり大きく変えることはされない方が無難といえましょう。 電源トランスは250V×2 の両波整流、整流管も6X4を用いて、「標準型5球スーパー」を製作しましょう。回路図は、こちらです。
3 部 品
標準回路ということで、部品もごく標準的なものを使っております。唯一家庭用スーパーラジオの後期に採用されましたバーアンテナを使っています。これは、最近の住環境から簡単に屋外にアンテナを張ることが難しくなっていますので、アンテナ不要なバーアンテナを採用しました。勿論外部アンテナを張れる方はソレノイドコイルを使われても結構でしょう。
すでに本会頒布の4球スーパーラジオ製作された方は、本キットとの違いをお分かりいただけると存じますがまとめておきます。
(1)整流回路に6X4を採用
(2)電源トランスに伏型を採用し、250V×2の両波整流回路を採用
(3)アウトプットトランスに余裕の5Wタイプを採用
(4)シャーシーを大型化し、また、アルミ板の厚さを1.5mmに
(5)高感度バーアンテナを採用
4 配 線
(1)部品の取り付け
穴あきシャーシーに軽い部品から取り付けます。取り付け方向に気をつけるのは、真空管ソケット、IFTです。IFTのピンの番号は小さいのでご 注意下さい。電源トランスは、端子を上の方に曲げてシャーシーの穴に入るようにしておきます。
トランスのビスがシャーシーの穴に入らない時は、ビスをプラスドライバーでかるくゆるめてからシャーシーの穴に合わせて入れます。トランスをシャーシーに差し込みましたら、ゆるめたトランスのビスをプラスドライバーでしっかり締め付けます。
(2)アース母船の配線
アース母船は引き回しておいた方が良いでしょう。ビスとナットの間に菊型ワッシャーなどを入れて、シャーシーとの接触を完全にした場合は、アース線を引き 回す必要はないかもしれません。
(3)CR類の配線
とくにどこからという決まりはありませんが、電源部、低周波増幅部、中間周波部、周波数変換部と動作をチェック確かめながら進めるのが良いでしょう。
極性に注意しなければならない電解コンデンサーは、確認しながら半田付け作業をします。
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大きい写真は、こちらです | 電源部付近 |
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周波数変換部 | 低周波増幅部周辺 |
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バーアンテナ付近 | 電源トランスは完成まで保護シートをかぶせます |
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背 面 | 正 面 |
5 調 整
4S−STD(DX)と同等ですが、バーアンテナのコイルの位置の決定は以下のように行います。
バーアンテナは、600kHz付近の低い周波数を受信してバーアンテナのコイルを動かし、最も感度が上がり音量の上がるところにボンドなどで固定します。低い周波数はどうしても感度が落ちますので、その補正をしておきます。高い周波数は、バリコンの親(290pf)側のトリーマーで最高感度になるよう調整します。
6 製作を終えて
さすがにバーアンテナは高感度で、夕方になると遠くの放送も聞こえはじめます。難をいえばバーアンテナには指向性があるのでラジオの置き場所は制約されるのは仕方がないことでしょう。出力トランスが6AQ5に対応して大型になったことで音質も結構良いようです。付属のスピーカーは、10cmと小さいので音楽放送を楽しむには大きいスピーカーを奮発しなければならないでしょう。
ダイヤル、ケースなどを製作されると「ホームラジオ」として、家族の皆様に楽しんでいただけるでしょう。