小型双三極管でプッシュプルアンプを製作

AMP-12DXの製作 

NPO法人ラジオ少年  原  恒 夫

 

 

1 はじめに  
 プッシュプルアンプを学習教材として製作しようとするとどうしても大型電源トランスや大型出力トランスが必要になります。そうしますと金額的にも膨らみ、教材費の削減が続く教育機関では、財源がなく製作が困難になります。ラジオ少年には、指導されている先生方から安価なプッシュプル回路を採用したアンプキットの頒布のリクエストが来ていました。
 そこで、ラジオ少年では、先輩諸氏も作られている12BH7や12AU7等の双三極管を使ったプッシュプル回路を検討してきました。幸い中国のトランスメーカーに試作を依頼していた小型のプシュプル用出力トランスが予想以上に良い特性であったので、キット化をすすめることにしました。コストダウンのためにAMP−1と同じサイズ、デザインのシャーシー(但し、真空管の穴は9ピンMT管用)をオーダーし、電源トランス他は全部共通部品を使用しました。


2 使用真空管と回路
 使用する真空管は、在庫の関係からMT9ピンの6414を低周波増幅と出力管に使いました。この球は、12AU7と12BH7の中間程度の球で、パワーはあまり期待出来ませんが、1本でプッシュプル回路を組めるので採用しました。双三極管や複合管を使う際は、十分ソケットの取り付け方向を考えなければなりません。特に入力部品と出力部品が交差しないようにあらかじめ紙の上で抵抗やコンデンサーを配置して検討する必要があります。キットには、底面写真をつけてありますので、真空管ソケットの取り付け方向や、CRの取り付け、ラグ板の利用など参考にしていただきたいと思います。
 一点アースを守ります。黒の線がアース母線になっています。ボリュームのアースやヒーターの片側をアース母線につなぐのを忘れるとハムに悩まされますの注意しましよう。
 回路は、低周波増幅、そしてPK分割回路、そしてプッシュプル回路になります。負帰還はかけていませんのが、好みに合わせてかけてみてください。
 

 
         真空管ソケットの向きにご注意ください。


3 試 聴
  配線が終わりましたら配線ミスがないか、配線忘れがないかを点検しましょう。問題がなければ、真空管を差し込み電源を入れます。
各部の電圧も測定しておきます。異常がなければCDをつないで試聴してみます。
 筆者も早速試聴してみますと予想よりも音域も広く、良い感じです。ただ、よく聴いてみるとピアノ曲などの音がわずかに震えているように感じました。負帰還をかけていないのですが、短い周期で発振しているようです。そこで、出力トランスの出力端子8Ωの線を0と8Ωのアースをつなぎ変えてみました。これで発振がとましました。「ピー」と発振してしまっていることがすぐ分かる場合と、ピアノなどをかけて試聴してみないと気が付かない発振がありますので、注意が必要です。
 
 6414という小型双三極管プシュプル回路の出力は1W+1W程度ですので、たいしたことはないと予想していましたが、これが結構な音量で、室内で聴くには十分な音量です。小型の出力トランスで、高域はのびるが低域はたいしたことはないだろうという予想でしたが、これがなんと低域ものびており、楽しめるアンプとなりました。
 出力段の6414を12AU7、12BH7等の双三極管に取り替えてみましたが、音量も音質もほとんど変わらず、手持ちの双三極管に取り替えてみてはいかがでしょうか。小型双三極管でプシュプル回路を学んでいただければ幸いです。