AMP−5 6080ステレオアンプ製作記
NPO法人ラジオ少年 原 恒 夫
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1 はじめに
アンプの製作をすすめていくうちに「良い音」を聞き分ける力がついてきたとは思いませんか。5極管の音、3極管の音、ICの音、シングルの音、プシュプルの音などが聞き分けられるようになっていませんか。測定器ですばらしい周波数特性のアンプがどうも良い音とは 感じないなど、人間の耳の特性の不思議さを体験されていると思います。。
筆者は、シャープさに欠けるようですが、3極管の音が好きで、5極管(4極ビーム管)を三極接続で、音楽を楽しんでいます。
ここでは、ヒーターの大食いや深いバイアスなどあまり使い勝手は良くないのですが、内部抵抗の小さい、安価な双三極管である6080を使って小型ステレオアンプを製作してみました。オーディオ愛好家の皆さんの中にも6080の音に魅力を感じている方が、多数おられるようです。
2 回路の検討
6080を使ったアンプの製作例は、多数専門誌やホームページで紹介されています。製作者の苦労は、やはり6080がユニット毎に特性のバラツキがあるので、それぞれのユニットにかけるバイアス電圧にあるようです。多くは、固定バイアスをやめ、ユニット毎のカソードに抵抗を入れ、自己バイアスを採用されているようです。
また、ドライブ電力も高感度の5極管(4極ビーム管)と違い、大きめの電力でおさなければならないようです。12BH7Aを使っている方が多いのですが、一回り小さい12AU7を使ってみました。12AU7を使って試作をしているうちに真空管屋さんから12BH7Aと12AU7の中間くらいの球6414を使ってみるようすすめられました。電気的定格では、12AU7と同じ程度のプレート損失ですが、電極のサイズが12BH7Aに近い大きさで、たよりがいのある(?)のとのことです。足ピンは、12AU7と同じ配置なので、そのまま差し替え出来ます。試作機を12AU7から6414に取り替えても音質も音量のほとんど変わらないので、6414を採用することとしました。GEのコンピ ューター用の球ですが、12AU7より安いのが魅力です。
初段は、12AX7ですが、互換のJJ製ECS803Sを使用しました。この球は価格的には12AX7とほとんど変わりませんが希望の数量が入手出来たため採用しました。
前段の球は−40Vほどの固定バイアスをかけ、6080は自己バイアスということで製作をすすめました。
3 電源回路
とにかく6080のヒーターは、大食いです。双三極管とはいえ1球に6.3V2.5A、2球で5Aも流れますので、放熱には十分注意が必要です。シャーシーは、真空管回りや中央部に放熱用の穴を多数あけました。実は試作段階では、穴あけがめんどうなので放熱用の穴 をあけないで作ったところ、シャーシーが熱くなるのに驚きました。放熱用の穴をあけた効果は絶大で、シャーシーはほんのり暖まるだけになりました。
電源トランスは、ケースをかぶせほぼ密閉状態のため2時間を過ぎたあたりから結構熱くなりますので、1日、2日と連続通電はさけた 方が良いでしょう。
電解コンデンサーは、コストを下げるため立型を使用していますので、固定方法に工夫が必要です。最近は、良い接着剤が出ていますので、シャーシーへ直接接着剤で付けています。
4 出力トランス
アンプの音のほとんどを決める出力トランスには、中国のオーディオメーカーに依頼し、将来6080より、一回り大きな球が使えるよう 25W定格を作ってもらいました。私達アマチュアの特技は、「部品を使い回して、グレードアップして行く」ということです。一次インピ ーダンスを3kΩで設計していますので、6CA7や300Bにグレードアップ出来そうです。
4 シャーシー
本キットでは、シャーシーはステンレスを使用しています。部品の取付には、バリに注意をして下さい。怪我防止のためトランス等の大 きな部品の取付には、軍手を用意するなど注意をしましょう。放熱効果を上げるため、シャーシーの下に付けるゴム足は、必ず取り付けるようにしましょう。竹のサイドパネルは、シャーシーの側面の曲げ角が90度越えているものがあり、曲げを修正するなどして、取付穴を合わせて3mmのビスで止めます。サイドパネルは、部品の取付前に一番最初に取り付けるの良いでしょう。
追加のビス穴などをあける際は、ドリルの刃は「ステンレス用」を使い、最初に一滴オイルをたらしてから穴あけ加工をします。
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放熱穴がいっぱいのシャーシーです |
5 配 線
回路が結構複雑ですからラグ板の使い方がポイントになりそうです。3P、5P、7P、13Pのラグ板をうまく使って、配線をすすめます。アースポイントを決め、そこからアースする回路に黒い線で配線します。シャーシーへの一点アースは、入力のRCAピンのアースからトランスのシャーシーへの止めねじにしっかり落とします。
よく配線を忘れるのが、ボリュームからのアースポイントへのアースです。ボリュームのアースから太めの黒い線で、アースポイントへアースしておきます。
真空管ソケットの取付方向も参考にされて下さい。6080は、ヒーターが前からよく見えるようにしましたので、配線からみますと最適方向とはいえません。
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シャーシー底面です |
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左チャンネル付近 |
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右チャンネル付近 |
6 おわりに
期待の3極管プシュプルアンプの試聴をしてみました。3極管特有の柔らかい音、そして、余裕の25W規格の出力トランスとで、低域から高域まで良く出ています。10W×2の迫力は、6AQ5のシングルアンプとは比べものになりません。ヒターの大食いの6080が2本と電源トランスからの発熱は相当なものですから、放熱には注意をされて下さい。シャーシーの下に付けているゴム足は、必ず取付て空気の流れを良くして下さい。
比較的安い真空管を使った若い方向けの廉価バージョンアンプですが、愛好家の皆様にも満足いただけると思います。
カップリングコンデンサーは、コストを押さえるためフイルムコンデンサー(630V 0.1μF)と小さめを使っています。容量を大きくししたり、オーディオ用の高級品に取り替えるなどのグレードアップをはかるのも楽しさを増幅させると思います。
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