AMP-MINI-DX製作記

50BM8を使った3W+3Wステレオアンプ


NPO法人ラジオ少年  原  恒 夫


1 はじめに

 小型出力管6AB8を使ったステレオアンプAMP-MINIは、1.4W+1.4Wという小出力ながら、アンプ製作の基礎教材としても、また、家庭で聞くステレオアンプとしても十分満足いただける出力と音質だと評価いただいております。しかし、そこは「ラジオ少年」としては、多少の改造をしてさらなる出力アップや音質の向上をねらいたいものです。
 ただAMP-MINIの出力トランスは3Wはもつもものの電源トランスは、180V 60mAという定格では、大きな改造は出来ません。そこでヒーターが50Vの球を使って、ヒーター分の電力をB+に回そうと考えた訳です。ヒーター電源分の、6.3V 2A つまり約12WをB+の方に回せると考えた訳です。電源トランスの設計は、コアの大きさから電力が決まっており、12Wの経済をすれば、12W分をB+側に回せると判断したわけです。ただ電力的に余裕があっても、60mA出力を倍の120mAも流すと、対応した太さのコイルを巻いていないので、発熱などの無理が生じます。
 では、3割ほどアップして、80mA位はどうでしょう。たぶん大丈夫だと思います。念のため80mAを2〜3時間流してみます。そして、トランスの温度が40〜50度程度に収まれば、問題はないでしょう。60mAを80mAで使うつまり 180V×0.02A=3.6W負荷を設計より多くかけることになりますが、そのかわりヒーター巻き線の6.3V×2A=12.6Wを使いませんので、コア自体(一次コイル)には差し引き9Wも余裕が出来ます。

2 50BM8を採用

 そんなわけで、早速ヒーター50Vの3極5極複合管を探してみます。やはりよく使われている50BM8を採用することにしました。この球は、プレート電圧200Vで3.5Wも出る球です。
 AMP-MINIをすでに製作された方は、ほとんどの部品が共通です。ただし出力トランスの負荷インピーダンスは7kΩに変更した方が良いでしょう。6AB8に比べ3極部もゲインがありますから簡単な負帰還をかけました。
 配線は、やはりアース母線を貼ることからはじめます。ヒーター50Vですから直列につなぎ100Vを入力します。
 AMP-MINIからグレードアップされる方は、コンデンサーの容量や抵抗値が多少異なっても問題ありません。「NPO法人ラジオ少年」では、出来る限り皆様に安くキットを提供をするため、CR類は、その時々の在庫を使うため、定数が実用上問題ない範囲で異なることがあります。

 
 50BM8に載せ替えたAMP-MINI-DX
 
底面写真で、部品の配置を確認下さい 
 
50BM8付近の配線です 


3 試 聴

  簡単な負帰還をかけためか、6AB8に比べ低域も高域ものびているようです。3W+3Wと出力も迫力があり、オーケーストらも十分楽しめる音量となりました。
  ヒーターを100Vラインから直接入れるため、ハムを心配しましたが、問題ないようです。


4 固定バイアスの実験

 さて、使っていないヒター電源6.3Vが気になりました。この6.3Vをあまり負荷をかけないで利用出来ないか考えてみました。50BM8の定格を見ますとバイアスは、16Vと出ています。そこで考えたのが、6.3Vを倍圧整流するとどのくらいの電圧が得られるを実験してみました。なんとちょうど16〜17Vが出ました。ボリュームなどで電圧調整をしなくともちょうど良いバイアス電圧が得られることが分かりました。
 さっそく、2本の50BM8の出力管のカソード抵抗とコンデンサーを外し、直接アースをし、500kΩのグリッド抵抗を通じてバイアス電圧−16Vをlかけてやりました。
このとき注意することは、配線が終了したら必ず50BM8の5極部のコントロールグリッド(G1)に−16V前後がかかっていることを確認します。もし、バイアス電圧がかかっていないと50BM8の5極管に大きなプレート電流が流れ、真空管を壊してしまいます。

 
  固定バイアスに配線したシャーシー底面
 
固定バイアス付近の配線です 


 試聴してみますと、セルフバイアスの時よりも一層低音が補強されてように感じました。人の耳に「感じる」ということは、測定すると相当低域が伸びているのだと思います。「ラジオ少年」の頒布のキットのセルフバイアスのアンプを固定バイアスに変更され、良好な結果を得たというレポートが多数届いています。皆様も実験の価値があると思います。セルフバイアスは、抵抗1個とバイパスコンデンサーで簡単にバイアスを得られますが、例えばカソード抵抗で16Vのバイアスを得られたということは、プレートにかかった電圧からバイアス分の16Vが差し引かれますので、「損」をしていることにもなります。
 その点、固定バイアスは、バイアス電源を別につくらなければなりませんが、かけたプレート電圧は、100パーセントプレートにかかることになります。

 繰り返しますが、固定バイアスの恐ろしいところは、バイアス電圧がなんらかの原因で出なくなった時は、出力管のグリッド(G1)にバイアス電圧がかからず、高価な出力管に大電流が流れ、短時間で球が不良になってしまうことです。固定バイアスにした場合は、必ず適正なバイアス電圧がグリッド(G1)にかかっているかチェックしまししょう。という筆者も送信機の出力管のバイアスがかかっていないのに気づかず多くの高価な球を何本も壊してしまいました。バイアスがかかっていない場合には、真空管が赤くなってきて、「チンチン」というみような音が聞こえて来ます。そういう時は急いで電源スイッチを切ります。5〜6分ゼロバイアスになった球に正常のバイアス電圧をかけてもじわじわとプレート電流が増え、赤くなってきます。つまりバイアス電圧でプレート電流をコントロールできなくなるのです。