韓 国 訪 問 記
平成14年5月29日、韓国仁川国際空港に着いた時、飛行機の窓から見える周囲の景色は、涙でくもりハッキリと見ることは出来ませんでした。闘病生活を送っていた一昨年には予想も出来なかった海外旅行が実現したのです。飛行機から入国審査室、税関へと進みましたが、一歩一歩と足を踏みしめ、外国に来たことを実感していました。
KARLビルにて |
1 HL1ACW 金さんにお世話になって
「韓国のワールドカップ特別記念局DT8FWCをたずねてみよう!」という私の提案に韓国通のJR8RRX市川さんが格安キップを手配いただき実現しました。最近JARL石狩後志支部長に就任されたJA8RAT西田さんも同行いただけることになり、ツアーは実現しました。韓国側では、親日家として有名なHL1ACW金さんが、KARLやワールドカップ特別記念局DT8FWCが開設されるキョンギ支部との連絡をとって下さいました。
5月29日午後の千歳発任川行きの飛行機は予定時間に任川空港に到着しました。韓国通の市川さんは、リムジンに乗る前に携帯電話を借りて来ました。早速何人かの韓国の友人に電話をかけていました。空港の中はW杯の看板や横断幕がにぎやかにかざってあります。リムジンに乗ると、W杯の特別キャンペーンということで「百歳酒」というお酒が無料配布されています。リムジンからの窓の景色は、干拓をした海の上を高速道路が走っています。車線も広く約1時間でソウル駅前に到着しました。そこからはタクシーでホテルへ直行です。ホテルは、予算を押さえるために韓国式の部屋に布団4組を引きみんなで頭を並べて寝るという修学旅行スタイルです。この部屋が1泊8,000円、つまり一人2,000円ですむのですから驚きです。韓国のホテルは、一人いくらではなく一室いくらということで、何人で泊まってもよいというのですからありがたい方式です。
HL1ACW金さんを囲んで ホテルにて |
2 KARL(韓国無線連盟)訪問
今回で3回目になりますがKARLを訪問しました。前回までは、かなり古いビルの一室でしたが、今回は、ビルを購入したということで一棟全部がKARLの事務所ということでした。1階が技術部、2階がソウル支部事務所、3階がKARLの事務所ということでした。3階の事務所では、HL1IFM朴さんが待っていて下さいました。理事長さんは、仕事の都合でお会い出来ませんでした。朴さんとは、ARDF競技の極東大会、HSTのブルガリア大会、また、韓国訪問の度にお会いしておりました。早速、今年北海道で全日本ARDF競技大会が開催されることをお知らせして、今回も是非韓国チームを北海道に派遣して頂きたいというお願いをしました。すでにJARLからも案内状をもらっていて、WEBで参加者を募集しているとの嬉しい対応でした。
韓国のアマチュア無線状況を伺い、日本との共通する課題など時間の過ぎるのがとても早く感じました。特にKARLの運営が、支部を中心として動いていることが分かりました。会員からの会費は、KARL本部と支部が折半しているとのことで、支部の力が強い組織となっているとのことです。
「特別局の開設は、どうやっていますか?」という私の質問に、朴さんは、
「支部が、郵政に申請して、事後報告を本部にしてもらっています。」とのこと、つまり、ほとんどの活動を支部が動かしているとのことです。JARLのような中央集権方式と韓国のような地方分権組織と、どちらが良いとすぐには判断できませんが、日本と全くちがうことが分かりました。
HL1ACW金OMと | KARLにて | ソウル支部長さんと | 元気なHL1IFM朴OM |
3 W杯特別記念局 DT8FWC 訪問
丁度日韓共催でW杯サッカーが始まるところでしたので、韓国のW杯特別記念局を訪問することとしました。これもHL1ACW金OMが仲介の労を取って下さって、北海道と同じ8の付く呼出符号のDT8FWCにご案内頂きました。と言っても本来韓国のエリアは1〜5までしかなく、8は特別のようでした。ともかく8をご縁にキョンギ支部(普通の局は2のエリア)の水原(スオン)市を訪ねました。水原市は人口100万の大きなそして近代的な街でした。HL1ACW金さんの車でご案内いただきましたが、ソウルから約1時間、高速を走って水原市へはいりました。市内に入る前から金さんは2mで水原市のハムの皆さんと連絡を取り合って、車内には盛んにハングルが飛び交っておりました。すると何台かのアンテナを付けた車が私たちの車の前に現れました。道案内のために先導してくれているのです。お陰様で私たちは無事キョンギ支部の事務所まで到着しました。まったくハムのありがたいところです。
キョンギ支部は、街の中の結構にぎやかなところのビルにあり、3階に案内されました。そこには、結構広い(30坪くらいか)の事務所があり、支部長さん 支部の事務所には沢山のHAMの皆さんが集まってくれていました。支部長さんは、獣医さんとのことで、忙しい中を私達の為に駆けつけてくれたのです。また、日本語の通訳として、遠いところから日本語の出来るYLさんを呼んでいてくれたのです。
そして、なんといっても感激したのは、大きな歓迎の横断幕が私達を歓迎していました。
歓迎の横断幕 | 通訳のYLさんと金さん |
キョンギ支部の皆さんと | 支部の説明を聞く市川氏 |
3 UNESCO指定の世界遺産「華城」を見学
水原市は、電子産業はじめ韓国の近代産業の中心となっているところですが、歴史遺産の豊かなところでもあります。キョンギ支部の皆さんに案内されて、遺跡を見学させて頂きました。特に、時期がW杯の開催を控えていたため、市内の至る所に、W杯のPRの旗や横断幕が張られ、市内一帯がW杯ムードに盛り上がっていました。6月2日に札幌に帰って来て、空港はむろん市内の目抜き通りなどにも旗1本立っておらず、韓国のW杯の取り組みと日本の取り組みの違いに驚いたものでした。
さて、案内頂いたのは、華城という城壁の一部です。水原市はもともと首都として移転を考えて造った都市国家のような立派な長城があったそうです。全部が残されているようではないのですが、案内頂いた西将台は、水原市を一望できるすばらしい眺めの城壁跡でした。遠くには出来たばかりのサッカー競技場もくっきりとみえています。この競技場は、鶴が羽を広げたようなデザインで、とても美しいものです。当初水原市内にある大手電子メーカーが出資して建設が進められそうですが、不景気が襲い工事が中断したのだそうです。これを知った市民が「一人一椅子運動」を展開して、資金を集め完成させたとのことです。市民の思いが込められた競技場なのです。
ところで、この水原市の城壁の跡は1997年、ユネスコの世界遺産として認められ、大切に保存することになっています。それで、驚いたのは、この入口に置いてあるパンフレットは、韓国、英語、日本語など各国語別に印刷してあるのです。また、案内ボランテアが常駐していて、各国語で案内してくれます。私たちも早速「日本語ボランテア」のお世話になりました。
それから、途中にテントがあり、なにかと思って寄ってみると、写真入りのIDカードを無料で作ってくれるというサービスでした。デジカメで写真を撮ってほんの数分待つとりっぱな身分証明書を作ってもらえるのです。私たちも早速作って頂きました。
UNESCOの遺産表示 | 案内の皆さんと | キョンギ支部長さんと | 夜の部 |
4 W杯特別記念局DT8FWC訪問
遺跡を見せていただいた後、市内のW杯イベント会場の大きな公園に出かけました。W杯を盛り上げるため、公園に立派な野外ステージをつくり、その周りにはテントの飲食店や出店などが出そろいにぎやかに盛り上げています。その一角にプレハブのハウスがあり、そこがDT8FWCの開設場所との事で案内されました。私たちが訪問した5月31日からの開局となっていましたが、設営に時間がかかり、開局は明日の15時頃との事でした。明日の訪問を約束して、今日は皆さんと一緒にテント村で軽く冷たいものを頂くこととしました。
6月1日、HL1ACWさんは仕事があるとのことで、私と西田さんで出かけることになりましたが、午前中のスケジュールがお互いに合わず、不安はあったもののソウルから各電車に乗り15時に水原市のDT8FWCのハウスまで集まることとしました。私も少し早めにソウルから電車に乗り水原に向けて出発しましたが、全く言葉がわからないので、さすがに不安でしたが、無事に水原駅に着きました。ソウルと水原までは70km位あり、普通電車で約1時間かかりましたが、電車賃が700ウオン、つまり70円くらいで行けたのには感心してしましました。
水原駅に着いた頃に雨が強くなり、駅前のタクシー乗り場は、えらい混み方で、結局8J8FWCに着いたのは約束の時間から2時間近くも遅れて到着となりました。幸い西田氏は予定の時間に到着されたとの事でした。
すでにDT8FWCは、アンテナやリグがセットされ、運用は始まっていました。私たちは運用できませんので、しばらくオペレーターの皆さんとラグチューをしてソウルへ戻りました。イベント会場には、たくさんの市民が訪れ、W杯はもちろん、アマチュア無線の良いPRになったと思います。
イベント会場の入り口 | プレハブがDT8FWD | OPの皆さんと | DT8FWCのOP |
5 雑 感
とにかく韓国のW杯への取り組みは大変な意気込みです。ですから、アマチュア無線への対応も全く違います。日本のFIFA実行委員会は、8J8C等のQSLにマーク使用どころか、W杯をイメージするデザインのQSLは絶対作ってはいけないという信じられない対応です。ところが、韓国のFIFA実行委員会は、アマチュア局がW杯を電波でPRすることを知り、30万枚のQSLカードを無料で印刷してくれたのだそうです。マーク使用は規定でなかなか難しいので、実行委員が自ら印刷するなら問題無しとイキな計らいをしてくれたのです。日本の実行委員会は、あれもだめ、これもだめを繰り返すお役所仕事で終始しているのです。ですから、成績も韓国と大きな差がついたのではないでしょうか。ただし、付け加えておきますと、札幌の実行委員会は実に良くアマチュア無線のPR活動を評価いただきQSLカードのマーク使用他を東京の日本委員会まで掛け合って下さいました。ありがとうございました。
韓国の4位、本当におめでとうございます。