実験 アンテナコイル
筆者  ラジオおじさん JA8ATG  原  恒 夫


1 ソレノイドコイル編
  ゲルマニュームラジオ、並三、並4、高一ラジオ、スーパーラジオ、とにかくどんなラジオにも最初にコイルとバリコンがあり、同調回路を作っています。そこでここでは、アンテナコイルの容量(インダクタンス)バリコンの容量(キャパシティー)を実験で検証したいと思います。
 コイルは、巻くボビンと線の直径での組み合わせによって無限に考えられます。また、バリコンも様々な容量の物があります。ここでは、

 コイル    直径25mmのベークボビン、コイルは0.2mmのホルマル線に決めました。
 バリコン   160pF、230pF、350pF、290pF、430pFの4種類としました。

 この条件の中で、設計して、実際に同調回路を作ってデーターを取ります。しかし、この実験は、あくまでも想定した配線の浮遊容量で計算し実験を進めています。皆さんがラジオを作った場合、部品の配置や部品間の距離、製作者の配線の個性など様々で、条件が異なっていますから、少なくとも±10パーセントくらいの浮遊容量の誤差がありそうです。

バリコンは、上記5種類と決めましたのでそれぞれのバリコンの容量に合わせて放送帯の最低共振回路におけるコイルの容量を計算してみましょう。

共振回路の公式から L(コイルの容量μH )= 159²×10 00000  /F(kHz)² × C(pf)   で、求められます。配線の浮遊容量は、20pfとしておきます。

 この式に当てはめて、放送帯の540kHzに共振させるには、コイルの容量はいくらになるか計算したのが下の表です。

540kHz共振するコイルの容量(計算値)   表1
バリコンの容量 浮遊容量 コイルの容量
160pF 20pF 約520μH
230pF 20pF 約370μH
290pF 20pF 約290μH
350pF 20pF 約240μH
430pF 20pF 約200μH

 では、早速最低共振周波数540kHzになるよう、上の表を参考にコイルを巻いてみましょう。

     540kHzに共振するコイルの巻き数とコイルの容量(実測値)
160pFのポリバリコン
巻き数 235回 540μH
  230pFのポリバリコン
巻き数 180回 350μH 
290pFのエアーバリコン
巻き数 135回 275μH 
430pFのエアーバリコン
105回 200μH

 540kHzに共振するようデイップメーターで調べた後にコイルの容量をLCメーター測りました。結果は、ほぼ計算値どおりでした。そして、ラジオの製作には、LCメ-ターとディップメーターがあると便利だということを今更ながら実感しました。自作派の皆さんにLCメーターとディップメーターの購入をお勧めします。

2 バーアンテナ編
 コイルにフェライトコアを入れるとコイルのインダクタンスが大きく増加します。また、アンテナコイルとして長いフェライトコアを入れたものを「バーアンテナ」と呼んでいます。このバーアンテナは、特に外部アンテナを付けなくとも高感度に電波を受けてくれるので移動用のラジオに多く使われています。特徴として、バーアンテナには8の字の指向性があり、これが使い方によっては長所にも短所にもなります。バーアンテナの特徴をまとめますと
(1)指向性がある。
(2)同じコイルの巻き数で比べるとソレノイドコイルの何倍もの容量が取れる。
(3)その為、同じ容量であれば小型に作れる。
(4)コイルの位置を動かすことによって大幅にコイルの容量を変化出来る。

 では、早速バーアンテナを作って実験してみましょう。コイルは、コイル直径10mm 0.2mmホルマル線 80回巻きのコイルをフェアライトコアを入れてみます。すると、表2のようにコイルの位置で大きくコイルの容量が変化することがわかります。

コイルの位置によるコイルの容量の変化                                  表2
コイルの位置 0(空芯) 10mm 20mm 30mm 40mm 50mm 60mm 70mm 80mm 90mm 100mm 120 130mm 140mm
コイルの容量

  では、入れるコアの長さとコイルの容量の変化はどうういう関係にあるでしょうか。入れるコアは、同質のもので長さだけを変えてあります。

フェアライトコアの長さとコイルの容量             表3
フェアライトコア長さ 最小容量 最大容量
  コアなし
  70mmのコア
 140mmのコア

 実験にの結果、
(1)コイルがコアの端にある時、コイルの容量が最小、中央で最大になる。
(2)コアの長さに比例してコイルの容量が大きくなる。


 この実験から、コイルを移動させる、または、コアを移動させるとコイルの容量が大きく変わることがわかります。ソレノイドコイルでは、コイルの容量を変化させるには、コイルの巻き数を変えなければコイルの容量を変えられませんでした。しかし、コイルとコアを組み合わせると、コイルの容量を連続的に変えることができます。この性質を利用して、同調周波数を変える方式をμ(ミュー)同調と言っています。ちなみにバリコンで同調周波数を変化させる方式をC同調と言っています。しかしμ同調を送信機のような電力回路に入れるとコアが発熱しますので、あまり大きな電力を扱う回路では使えません。