ヒーター電圧の微調整の工夫


 原  恒 夫    


 ヒーター電圧の微調整の工夫を考えてみましょう。真空管の寿命を考えると例えば6.3V管ですと、5パーセント程度(電圧にして0.3V位い)低めにした方が良いでしょう。
 最近のACラインは良くなって、殆ど100V〜105V位が家庭に届いています。105V位まで高くなると、ヒーター電圧も約5パーセント高くなって6.6V以上が真空管にかかっていることがあります。また、6.3V 3Aというトランスの規格を1Aしか使わないことがあり負荷が軽いとこれも高い電圧が出ています。また、トランスの個々のばらつきもあります。
 高いヒーター電圧を少し低くする工夫を考えてみましょう。  


 実験の前に正確なテスターを用意しましょう。

工夫 1  抵抗で電圧を下げる方法   図1、図2

    0.5Ω〜1.5Ω程度の抵抗をヒーター回路に直列に入れます。
   
   低下する電圧はオームの法則から  電流×抵抗 ですが、計算が面倒でしたら、0.5Ω、1Ω、1.5Ωの抵抗を実際に入れて見て、低下の様子をテスターで測ってみます。真空管のヒーターに6.0V〜6.3Vの電圧がかかる範囲に入るような抵抗を入れると良いのです。 

  例として、6BA6、6AV6、6AR5を使ったラジオのヒター電圧を下げて見ましょう。これらのヒーター電流は、0.3A+0.3A+0.45Aで合計で流れる電流は1.05Aですから、
   0.5Ωの抵抗   低下電圧1.05A×0.5Ω=0.55Vの低下
     1Ωの抵抗   低下電圧1.05A×1Ω  =1.05Vの低下
   1.5Ωの抵抗   低下電圧1.05A×1.5Ω=1.57Vの低下
 
 となります。更に細かな電圧調整をするには、抵抗を並列つなぎや直列つなぎにして、合成抵抗を作ると良いでしょう。
 
 但し、抵抗で消費される電力(W)は、オームの法則から電流の二乗×抵抗ですから、
上の例では
  0.5Ωの抵抗の消費電力  1.05A×1.05A×0.5Ω=0.55W
  2A流れる回路では、2×2×0.5=2W です。
  3A流れる回路では、3×3×0.5=4.5Wです。

 ここでは、5Wのセメント抵抗を使いました。

工夫 2  使っていない整流管などのヒーターの電源巻線を一次コイルに足して、巻線比を変えてヒーター電圧を下げる方法です。下率は、約5パーセントです。この方法の欠点は、二次側の250V等の高圧も同じく5パーセントほど電圧が下がってしまいます。 
 図3のように配線しますが、かえってヒーター電圧が上がってしまった場合は、図4のように足すコイルの端子の接続を反対にします。

応用  足したコイルで電圧の上がってしまう接続の応用として、ヒーター電圧がやや低めで例えば5.8Vしかない場合には、この電圧を上げる方に接続すると、5パーセント程度つまり5.8×1.05=6.09Vと少し高くできます。このやり方の欠点は、250V等の高圧も5パーセント程度電圧が上がってしまうことです。