実践ICラジオの製作
著作 おじさん JA8ATG 原 恒 夫
1 初めてのIC
おじさんが初めてICに会えたのは何時のことだったはっきり覚えていません。ICの出始めの「ハイブリッドIC」というやつかも知れません。このハイブリッドICは、集積回路といえばそうかもしれないと思える程度のものなんです。そうオーデオアンプのICだったと思います。なんせどでかくてたいして中味は詰まっていません。パワートラジシスタが2個入っていてOTL(出力トランスがいらないような設計)で、パッケージを開けてみると中にはなんとプリント板が入っていてトランジスタがくっつけてあるんです。たしかにパッケージになっているから半田づけの手数はいくらか省力化できると言うわけです。ICとはこんなものかと思っているうちにキャラメルくらいの大きさのパッケージに100個とか、1000個とかのとんでもない数の半導体が詰まった本当の意味でのICが出てきました。それで、そのころになってラジカセやテレビの中を覗くと、そのキャラメル程度のICがぱらぱらと何個か入って、がらんとしているのです。新しい無線機にも沢山ICが使われるようになって来ました。回路もデジタル信号でさっぱりわからなくなってしいました。そして、とうとう1チップでAMラジオ、FMラジオなどが出来るようになったらしいのです。
「ヒャー、ひどいことになったぞ。これだとラジオの組み立ても、バリコンと、コイルと電池をつけたら完成じゃないか。楽しみがなくなったぞ!」
おじさんの考えることは、時代に逆行しているらしく、世の中の電子機器は、どんどんカスタムIC(ある特定の目的だけに使うために設計されたIC)が生産されだしたのです。おじさんは、だいぶ時代に置いてきぼりにされたようですが、とにかくICラジオを作って見ることにしました。
2 ICラジオキット FK−708
このキットは、高周波増幅と検波用のICと低周波増幅用のIC、つまり2ICのストレートラジオです。タイの最大手のキットメーカーの発売しているストレートラジオです。購入は、WEB SHOP 「ラジオ少年」で1200円で頒布されています。1200円という低価格にもかかわらずスピーカーが付いています。スピーカー付きということはスピーカーがなるということなのです。おじさんの経験では、この程度のたった2ICのストレートラジオの性能といえば、アンテナリードを2〜3mを付けて、か細くスピーカーから音が出る−−−−と想像していました。ところがですよ。半田づけが終わって電池をつないだとたん、おじさんはたまげてしましました。なんと小さなスピーカーがぶっ壊れそうなデカイ音で放送が聞こえたではありません。
「なんだ。これは!」
おじさんはおどろきましたよ。本当に。
これがキットの全部品です | 左が高周波増幅IC、右が低周波増幅IC |
3 回路と部品の働き 回路図はこちら
回路は、実に簡単です。バリコンとコイルで選局し、高周波増幅と検波をMK−484というICにやらせています。このICは、ミツミの501と同等の3端子ICです。この小さなICの中にはAGC(電波の強さによって増幅度を自動的に変える回路)付きの高周波増幅3段で、検波回路まで付いているそうです。その後ろの低周波増幅用ICで、12Vで8Ωのスピーカーをならし、なんと2Wも出るというのです。ICの名称はTBA820Mです。国産の386シリーズと同等のICです。2Wも出るのでおじさんは驚いてしまったのです。
組み立ては、実に簡単です。プリント板のシルク印刷に従って、部品を差し込んで半田付けして、長い部品の線をニッパで切ってやれば良いのです。
どこから半田付けをしてもいいのですが、一応の手順です。
1 抵抗値のカラーコード確認して全部差し込んでしまいます。
2 コンデンサーも容量と極性のある物は極性を確認しながら差し込みます。
3 プリント板をひっくり返して半田付けします。
4 余ったリード線をニッパで切ります。
5 IC2のソケット差し込みます。(ソケットの引っ込んだところとプリントの引っ込んだところを合わせて挿入)
5 IC2のソケットを半田付けします。
6 IC1を半田付けします。
7 バリコン、ボリューム、バーアンテナなど外付けパーツを半田づけします。
8 プリント板の裏をよく見て、ブリッジ(となりの端子と半田でくっついてしまったところ)がないか確かめます。
9 ICを方向を間違えないよう差し込みます。
10 電池をつなぎます。
これで調整もなにもなしでガンガン鳴るのです。超簡単!
抵抗とコンデンサーを差し込んでおきます | 半田付けが終わったら余った線を切ります | 完成したプリント基板 |
4 セットアップ
好みに応じてセットアップします。おじさんはまな板が好きです。100円ショップへ行って、セットアップしたら格好のいいまな板や箱、プラスチックケースなどを買って来て下さい。
おじさんは、奮発してエアーバリコン(WEB SHOP 「ラジオ少年」の頒布品)とバーニアダイヤルを付けてみました。
まな板に乗っけたICラジオ | 裏側から写しました |
バーニアダイアルが光ります | エアーバリコンを使ってみました |
5 チューニング
作りっ放しで、特に問題がありませんが、自分好みにチューニングしてみました。
同調周波数の拡大 付属のポリバリコンの片側のみを使用した場合はやや受信周波数範囲が狭く、600kHz〜1600kHz程度しかカバーしません。500kHz代に放送局がある場合は、もう片方も使い並列接続にします。トリマーが容量最大になっている場合は、高い周波数がカバー出来ない場合がありますからトリマーを最小にしておきます。
受信感度の調整 このキットでは、ICメーカーの最大感度の定数にしています。C−4の0.1μFを0.05とか小さくすると感度を押さえられ検波出力を小さくするることが出来ます。近くに放送局があるとAGCの調整範囲を超えて、音にひずみが出るようです。
低周波出力の調整 R5を大きくすると増幅率を低く出来ます。抵抗値の範囲は30Ωから120Ωです。おじさんの場合はあんまり音がデカイので100Ωに取り替えました。
いずれのICも細かなことはインターネットで検索しますと、メーカーはじめ使用例など見ることが出来ます。
バリコン 付属のポリバリコンで問題ないのですが、おじさんは奮発してエアーバリコンを使ってみました。特に感度などには変化がありません。
6 雑 感
ICラジオは、簡単なのに鳴りすぎます。!!!!
もっと遊ぶところがほしいよ−−−という感想でした。しかし、青少年の皆さんが自分が組んだラジオが、こんなにガンガン鳴りだしたら嬉しくて嬉しく泣いちゃいますね。プラスチックケースに入れて、持ち歩き出来るようにすると楽しいかも。1200円で、これだけ遊べるなら安すぎます。