おじさんの並四ラジオ製作記
筆者 ラジオおじさん JA8ATG 原  恒夫 

   主役の200H低周波チョークが中央に

1 メインパーツを集める
 皆さんが新しいラジオやアンプを作るときは手持ち部品を優先しますか。それとも回路図を優先しますか。おじさんは、断然(?)手持ち部品を優先します。勿論予算の関係からです。回路図の通り部品を集めて作れば、回路図通りの最高の性能を発揮するラジオが完成するかもしれませんが、それだけ回路図通りの部品を買わなくてはなりません。つまりお金がかかることになります。おじさんはずっと手持ち優先で最小の投資でラジオや無線機づくりを楽しんで来ました。そんなやり方で小学生中学生時代をラジオづくりに取り組んで来ましたが、高校生になったアマチュア無線局を開局しようと「CQ HAM RADIO」という無線雑誌を買って来た時のことでした。広告を見て驚いたのが街の電気屋さんで売っている1000円の真空管が小沢電気という秋葉原のお店で200円とか300円で売っているではありませんか。そして、試しに通販で小沢電気さん(本当は様をつけたいくらい)から真空管を取り寄せてみました。すると見たこともないJANとかいう印刷された真空管が送られて来ました。私は、半信半疑でその真空管をラジオにさして見ました。全く街で買ったTOSHIBAとかTENとかの真空管と同じように使えるのです。後で先輩のハムに教えてもらったのですが、「JANはアメリカの軍用規格品で、街で売っている真空管よりずっと信頼性のある球」と教えられました。
 横道にそれましたが、まず皆さんの手持ち部品を確かめて、使える部品、あるいは代用出来る部品がないか確かめて見ましょう。

(1)性能を落とさない代用品
 真空管には、最初に書いた米軍規格の数字ばっかりの真空管であるとか、名前がまったく違うが互換性のある球、専用管ではないので多少性能が落ちるが使える球等があります。
並四ラジオで考えて見ますと
検波管の6BA6 低周波増幅の6AV6 電力増幅の6AR5 整流 5MK9 の標準ラインナップの製作を考えて、そんなに性能を落とさないMT管の代用真空管を考えてみましょう。

検波管 6BA6 6BD6、6AU6、6AK5、6AU6、6CB6、6CD6、6BH6など互換性の高い球が沢山あります。
低周波増幅管 6AV6 6C4、12AX7や12AU7・12AT7のような双三極管の半分、6BA6や代用管の3極管接続が考えられます。ゲインが取れるのでそのまま5極管で低周波増幅するのも良いでしょう。
電力増幅管 6AR5 6AQ5、6BQ5(大き過ぎるか?)
整流管 5MK9  6X4などの両波整流管のプレートを並列接続で使う。思い切って10円のダイオードを使う。
ヒーターの3V管や12ボルト管を使う手もあります。3ボルト管はヒーターは2本を直列にして6Vで使う。エッ! 0.3V電圧が高くかかりすぎるって! ヒーター電圧は10パーセントくらい高くても低くてもかまいません。12V管は、トランスに6.3Vが二組出ていることが必要です。ただこのようにヒーターの異なる電圧に組み合わせて使う場合は、作った本人でさえ忘れてしまい12V管のところに6.3V管を差し込んでしまうとヒーターを切ってしまうことになります。テレビ球を代替えに使うとすれば、もっともっとレパートリーが広がります。また、MT、GT、STの混合であればこれも様々な組み合わせが考えられます。

出力トランス 例えば、回路図に7kΩ:8Ω とあって、手持ちにぴったりのトランスがない場合つなぐスピーカーで合わせます。
代用品 3kΩ:4Ω  8Ωのスピーカーをつなげば見かけ上の一次側のインピーダンスが上がって6kΩになります。これを応用すれば、接続するスピーカーのインピーダンスを適当に選べば一次インピーダンスを合わせることが出来ます。

電源トランス 例えば6V2A位のトランスが手持ちであれば、ジャンク屋さんで高圧だけのトランスをさがします。トランスが2個になりますが使えます。また、ダイオードで倍圧整流やブリッジ整流を使えば、かなり自由な設定ができます。 性能を落とさないで代替部品を見つけるのは難しいことですが、手持ちの関係や予算の関係でいろいろ考える工夫するるところが楽しいところなんです。

回路を変える この並四ラジオは、再生検波を採用しています。再生のかける量をコントロールする方法にバリコンで帰還量を変える方法とボリュームで真空管の動作を変える方法とがあります。
問題は、バリコンで帰還量を変える場合、市場に豆バリコンがなくなっていることで手にはいりません。代用品としては、タイトバリコンを使う、ポリバリコンを使う方法があります。
回路を変えてボリュームで真空管の動作をコントロールする方法があります。おじさんはこの方法が好きです。何回か(何十回か?)再生検波のラジオを作っていますが、どうもカソードタイプの再生のかけ方の方がスムーズに調整できるように思えます。

別の部品を考える
 例えばアンテナコイルを、筒に巻いたソレノイドコイルから、トロイダルコアにします。新しくトロイダルコアを買うなら高くなりますが、ジャンクボックスに転がっているコアを使うならただになります。整流管も手に入りにくく高価なので10円のダイオードですませるということも出来ます。パイロットランプもLEDで済ますことが出来ますね。真空管のソケットも標準の形の物でなく特殊な形の物、プリント配線用などを工夫して使うと安くなります。

(2)多少性能が落ちるが使える代用品

低周波チョーク、高周波チョーク 100H以上の低周波チョークは手に入りにくいのですが(WEB SHOP 「ラジオ少年」では安価に頒布していますが)抵抗で代用出来ます。検波管のプレートチョークはレート負荷を抵抗から低周波チョークに変えた時は音量や音質が劇的に変わるので驚きます。高周波チョークの抵抗は10kΩ程度ですのであまり大きな性能の変化はありませんが、再生のかかりはスムーズさに欠けるようです。

電力増幅管 パワーを2Wもいらない0.1W程度で良いなら6BA6などの5極管や6C4などの3極管、12U7などの双三極管の並列接続が考えられます。0.1Wはすごい小さな出力に思われがちですが、一人で聞くには充分な音量です。

出力トランス おじさんの小学生の頃、つまり半世紀以上前にラジオの製作記事を書いておられた杉本哲先生は、その豊かな知識を生かして、様々な代用品の使用例を紹介されていした。
出力トランスの設計と構造がよくにているのが電源トランスです。つまり電源ランスの100V側又は高圧の250V等を真空管のプレート負荷側、ヒーター用の6.3Vや5V側はスピーカー側になります。設計や仕様によってインピーダンスは違うと思いますが、これが結構出力トランスに使えるのです。

(3)その他の安くする工夫
 特別な工夫ではないのですが、実行してみましょう。

標準品は買わない  真空管 6BA6、6VA6、6AR5などのポユラーな真空管や部品は高価です。ですから使わないようにします。たとえば前述のような米軍規格の数字ばっかりの球を選ぶ、なじみのないヨーロッパ球やロシア球を選ぶなどです。同じ、あるいは性能が良くて半値以下で買えることがあります。

抵抗、コンデンサー
 製作記事では500kΩとか1MΩとか0.1μFなどのきりのいい値の抵抗やコンデンサーが使われていますが、これを540kΩとか1.2MΩ、0.22μFなどの中途半端な値の物を選んで買うのです。半端な値の抵抗やコンデンサーは買う人少ないので、値段は半値とか極端な例では捨て値で買えるのです。だいたい私たちに使う民生用の部品の精度は誤差が20パーセントくらいです。プリントしてある値だと思っていても実際にはLCメーターで測ってみると相当の誤差があるのです。また回路の動作上では部品の±20パーセント位はなんの問題もなく動作します。ただ、同調回路のコンデンサーは誤差がずばり共振周波数に影響しますので注意が必要です。平滑回路やB+の電源のイピーダンスを下げる目的のコンデンサーなどは、最小限の容量が書いてあるので、いくら大きくても(大げさですが)かまわないのです。大きい方がリプル減りまた回路のインピーダンスが下がって良い場合が多いのです。手持ち部品や安い部品をおおいに活用しましょう。

高圧コンデンサー 最近は、真空管用の高耐圧のコンデンサーが見かけなくなりました。また、売っていたとしても価格が高騰しています。そこで知恵を働かせましょう。コンデンサーや整流用のダイオードは直列接続で耐圧は2倍、3倍と上がっていくのでしたね。例えば、400V 20μFの電解コンデンサーが必要な場合、1個500円以上もするでしょう。これを安い耐圧200Vのコンデンサーを2個直列に接続すれば、耐圧400Vになります。もっと安い耐圧150Vのコンデンサーであれば、3個直列にすれば450V仕様になります。ただ、直列にすれば容量が2分の1、3分の1と小さくなってしましますから予定の20μFよりは小さくならないようにします。また、コンデンサー1個当たりに同じ電圧がかかるよう分圧抵抗を入れておきます。分圧抵抗は、100kΩ〜1MΩ(4分の1W以上)位の同じ抵抗値の物を入れます。あるラジオの本では、使い捨てカメラのフラッシュのところに入っているコンデンサーを直列にして使う例が紹介されています。ただの部品を有効に使う素晴らしいアイデアです。
 整流用ダイオードも同じように耐圧の低い安い物を買い、直列つなぎにして耐圧を2倍3倍とします。これにも分圧抵抗を入れます。サージ電圧防止用のコンデンサーを入れると良いのですが、300V以下のラジオ用電源では省略してもダイオードが飛ぶことはないでしょう。

電源コード 
秋葉原では、時々見かけますが、プラグがついいた電源コードが50円〜100円で売っています。プラグだけでも買えば100円はします。おじさんはつい「コードはおまけか」と思って買ってしまします。このようになんにでも使える共通品は目についた時に買いためておきます。おじさんはこの癖がついていて、つい安さにつられて買い込んでしまった部品が沢山あって、おばさんにしかられています。それから、すてるような家電製品は捨てる際にニッパでこの電源コードを切り取ってしまっておきます。おじさんは、「何時か使う」ということでストックした部品が山のようにあり困っています。貧乏性です。

ビス、ナット、ワシャ類  これも電気製品を捨てるときにバラバラにしてビス、ナット類は残しておきます。ビスケットなど鉄板のお菓子の箱などにどさっといれておき、使う時に箱の中を適当なビスがないかさがします。少しは整理しようと100円ショップでプラスチックケースを買ってきて、3mmビス、4mmビスなど分類してしまうとかえっていざ使う際には不便だということに気づきました。お菓子の箱にあらゆるサイズのねじビスワッシャなどがゴチャゴチャに入っている方が便利なのです。

友達を作る これが「究極」の安く作る方法でしょう。作りかけで放置してあるアンプ、買いためた部品、「友達の部品は私の部品?」という訳で、なんでも安く分けてもらいます。友達がグループとなればもっともっと部品の調達は楽になります。安く分けてもらうメリットもありますが、どこでどんな部品がいくらで売っているなど超貴重な情報ももらえること請け合いです。


2 実践並四ラジオの製作
 
(1)回路の研究
 
  再生検波ですが、一般的な豆コンを使って結合度を変えて再生を調整するか、あるいは、結合度を一定にして検波管の動作を変えて再生を調整するか二つの回路があります。多くは、豆コンを使う方の方が多いようです。しかし、何台か再生式検波ラジオを作ってみますと、どうも後者の方が再生が連続的にスムーズにかかるように感じています。皆さんはいかがですか。おまけに豆コンが手に入りにくいという事情もあります。豆コンの代替え部品としてタイト製の小容量のバリコンが使えます。また、ポリバリコンも直列コンデンサーを入れて耐圧高めることで使用可能です。一番の問題は、再生のかかり具合のスムーズさです。あのピーとかギャーの発信音を、好きな方はいないでしょう。できるだけ、ピーギャー言わせたく(鳴らせたくか?)ないのです。 
 ただ、豆コン式では、再生コイルと同調コイルを別に巻きますから、再生コイルの巻き数を調整しても同調周波数に影響されないというメリットがあります。ボリュームで検波管のスクーリングリット電圧を変える方式の場合、再生コイルは、同調コイルと一部共用になり、再生の強さを調節するため、カソードコイルの巻き数を調整すると同調周波数も変わってしまいます。まあ、カソードコイルの独立して巻けば良いのですが、再生の掛かり具合は、やはり再生コイルと共用した方が、良いように思います。皆さんの実験では如何でしょうか。
 結局おじさんは、ボリュームで再生を調整するカソード方式を採用することとしました。
 検波管は、後の使い回しを考えて、躊躇せず6BA6を採用しました。
 次に、多くの製作例では、低周波増幅管には6AV6の三極部を使っていますが、6AV6は5球スーパーの検波と増幅管としてポピュラーで品薄でもともと安い球なのですが値段が高くなっています。高くなっていることに嫌気がさしてここは6BA6をそのまま、つまり5極管として使い低周波増幅をさせています。ゲインがありすぎるので3極接続で充分です。これでスクーリングリット抵抗が1個経済できます。5極管接続でゲインがあまりすぎるようでしたらカソードに入っているバイパスコンデンサーを抜くのも手です。私は、この方法を使っています。
 電力増幅は、並の6AR5ですが、これもポピュラー過ぎて価格が高くなっています。出力1W以下なら6AK6を起用しましょう。一人で聞くなら低周波増幅用の3極管、双三極管でいきましょう。高周波増幅管の6BA6も結構大きな音が出せます。これらの実験は後で紹介しております。


(2)部品の研究
 次にプレート負荷の低周波トランスですが、100H以上のトランスは手に入りにくいんですが抵抗で代用できます。WEB SHOP「ラジオ少年」では安価に頒布しています。抵抗負荷に比べチョーク負荷は格段に大きな検波出力が得られるという特徴があります。それは、検波管の最適負荷インピーダンスである250kΩ程度の固定抵抗で代用すると、検波管のプレートにかかる直流電圧は、わずか30V程度までに落ちてしまいます。つまり30Vの低電圧で真空管を動作させていることになります。ここは、なんとしても100H以上の低周波チョークを使いたいところです。幸いWEB SHOP 「ラジオ少年」で、低価格でこの低周波チョークを頒布していますから、これを使わない手はないでしょう。250kΩの固定抵抗からこのチョークに取り替えると、直流抵抗は固定抵抗の100分の1程度の2kΩ以下になり、検波管のプレートには200V以上に電圧が供給され、検波管は快適に動作してくれるのです。もちろん低周波チョークのインピーダンス(20〜3kHz程度の低周波抵抗)は、200kΩ以上で検波管の最適負荷になるのです。
 プレートに入れる高周波チョークコイルは、チョークコイルの方が良いのは勿論ですが、10kΩ程度の比較的低い抵抗値ですから固定抵抗で代用しても良いでしょう。検波管に流れるプレート電流は10mA以下ですから、そんなに大きな電流容量の高周波チョークは入れる必要がありません。1〜4mH程度のトランジスタ用の高周波チョークでもよいでしょう。
 使う真空管ですが、検波管は6BA6が良いでしょう。それは、性能と価格とのバランスがよいこと、5球スーパーやアンプへの使い回しが出来ることがあります。検波管として最高の性能が出ても価格が高かったり、使い回しのきかない球は、私たち製作マニアには向かないのです。
 アンテナコイルは、自作が簡単ですから自作しましょう。ペアで使うエアーバリコンは品薄で、手持ちや手に入る容量の物を使わざるを得ませんので、こちらからコイルに合わせて最大容量350pfを使いたいと言っても無理な話です。手に入るバリコンの容量に合わせてコイルは自作することによって、自作の自由度は高まります。ここまで来るとLCメーターが是非とも欲しいところです。欲を言えば共振周波数が直読できるディップメーターもそろえたいです。LCメーターの国内最低価格は台湾製の12,000円程度で決して安くはありません。WEB SHOP 「ラジオ少年」 では、タイの測定器専門メーカー品を6,000円で頒布しています。アマチュア用には十分な精度でお勧めします。ディップメターは、DELICAの製品が良く、少し高価になりますがデジタルカウンター付きを買いますとスーパーラジオのIFT455KHzを正確に調整出来るほか、オールウエーブ受信機の信号発生器として使えます。
 抵抗とコンデンサーを一つずつ買いますと結構な合計価格になります。これも同じくWEB SHOP 「ラジオ少年」 頒布の、「5球スーパーCRセット」500円を購入しますと並三、並四、5球スーパーラジオ製作のCR類には殆ど不自由しないでしょう。このセットに入っている400V 10μFは、小売り価格が200円もしますから超お買い得セットになっています。
 バリコンもWEB SHOP 「ラジオ少年の」 スーパーラジオ用の親子エア−バリコンを親子並列で使います。もうこのエアーバリコンも国内では生産していませんので購入しておいた方が良いでしょう。
今後スーパーラジオを作った時に使い回せるバリコンです。付属のトリマーのビスはゆるめておき最小容量を小さくして使います。
 電解コンデンサーももう秋葉原電気街にも見あたらなくなりました。たとえあったとしても中古のが1000円以上で売られています。おなじくこれもWEB SHOP 「ラジオ少年」  で安価に頒布していますので手に入れましょう。高圧のブロック型コンデンサーが手に入らないときは、前述のように直列つなぎで耐圧を増やしましょう。
 電源トランスですが、検波管のプレート負荷に低周波チョークを使った場合誘導ハムから逃げるのに苦労をします。小さなシャーシーの限られたスペースの中で誘導ハムを逃げるため部品配置に大変苦労します。必ず電磁シールド付きの電源トランスを使いましょう。WEB SHOP 「ラジオ少年」  では、低価格の銅板シールド帯付きの電源トランスを頒布しています。このように再生検波では、
チョークとトランス共に誘導ハム対策をした物を使うことをお勧めします。

WEB SHOP 「ラジオ少年」頒布品  詳細HP http://www.radioboy.org
200Hチョーク シールドバンド付き電源 親子エアーバリコン 5球スーパー用CRセット ブロック電解コンデンサー



(3)製作の実際 シャーシーは。ミズホの穴あきシャーシーを使ってみました。MT管の補助プレートを使っても結構ですが、WEB SHOP 「ラジオ少年」  で頒布しているST管の穴にぴったりのMT管7ピン用のソケット使ってみました。これはサトーパーツ製です。シャーシーにすでに穴があいていますので自ずと部品配置が制限されます。楽をしようとすると自由度は落ちますね。
う〜ん。一番困ったのは200Hのチョークコイルです。背が結構高いのでシャーシーの中に入りません。それでは、バリコンをシャーシーの中に、チョークコイルは、シャーシー上のど真ん中に配置しましょう。でも、電源トランスが近くて心配ですが、とにかくやってみましょう。

 主な部品の取り付け、と言っても電源トランスとチョークコイルは仮止めとしておき、後で誘導ハムを確認しながら最終的に位置を決めましょう。電源トランスもWEB SHOP 「ラジオ少年」  頒布のユニバーサル取り付け金具の付いた5球スーパー用トランスです。このトランスは、銅板シールドがびしっと巻かれた高級品です。取り付け金具がユニバーサルなので、完成してから誘導ハムの最小の向き取り付ければ良いのです。シャーシー上にゆとりがあり電源トランスと低周波チョークの距離が離せる場合は、もう一回り容量の小さい250V 40mAで充分でしょう。アウトプットトランスは、小さいのでシャーシー中に入れることにしました。
 整流回路ですが、整流管で正常に動作するものが無かったのでシリコンダイオード整流としました。ミズホの穴あきシャーシーは、すでに整流管用の穴があいているので、ここには不良整流管をさして置くことにしました。かっこうだけで整流回路の配線はしてありません。

 主要部品が取り付けられました次は、アース母線を張ります。1点アースまでの気を使う必要はありませんが、アースはしっかりしているにこしたことはありません。アース母線が張ったら次はヒーター回路です。3番ピン、または4番ピンをどちらか統一してアースします。ついでに真空管ソケットのセンターピンも整流管以外はアースします。 いよいよ部品を取り付けますが、やたらにべたべた付けないで、整流回路、低周波増幅回路、そして再生検波回路と進みます。各段の配線が終わった段階で、電圧や動作をチェックしておきます。


 電源回路 ヒーター電圧と250V交流、そして、整流回路通過後の直流250Vをチェックしておきます。ダイオードを通った後は無負荷では300Vを少し越えています。さわると大変です。気をつけましょう。私が感電するのはどうしてか小指からです。親指と人差し指が気になっていて、B+にはさわらないようにしていますが、小指には注意がいかずいつの間にかB+に小指がふれてしましいビリビリ感電してしまい慌ててしまします。皆さんが感電することの多い指は何指ですか。

 低周波増幅回路  6AB6と6AR5の2段増幅ですから結構ゲインがあります。6BA6のグリッドの1番ピン6AR5の1番ピンにさわるとガリガリとかぶーんとか音がでれば正常に動作しています。
音が出ない場合は各電極の電圧チェックで適正な電圧がかかっているか、誤配線がないか確認します。ボリュームの配線も右に回すとハム音が大きくなるか確認しておきます。ボリュームの回す方向が反対なら配線の右左を取り替えます。ボリュームのケースをアースしてみてハム音が小さくなるようでしたら、ケースをがっちりアースします。
 この段階で、検波管の低周波チョークを仮配線してみます。ハム音がぐっと増えましたね。これが電源トランスからの誘導ハムです。電源トランス、チョーク共に動かしてハム音の最小になる位置を見つけます。ハム音が最小ならならないまでも妥協出来る位置で電源トランスとチョークをビス止めします。私の場合、WEB SHOP 「ラジオ少年」 頒布の銅板シールド帯付き電源トランスとシールドケース付き低周波チョークを使いました。このトランス間の誘導ハム音は、結構大きな音が出て耳障りです。ほんの数センチ動かすだけで、横向きを縦にするだけで大幅にハム音が減る位置があります。ハム音が最小の位置があったとしても曲がった状態では格好が悪いので、結局どこで妥協するかということになります。WEB SHOP 「ラジオ少年」の電源トランスは、取り付け金具がユニオバーサルになっていて、取り付け位置が上下左右ひっくり返して取り付けられるので、自由度が高くて良い製品です。日本の一般的な伏型ではこうは自由に出来ません。書き遅れましたが、こうやって誘導ハムの最小点が見つけるためには、トランスやチョークの線が短いと、ひっくり返したり、横にしたり位置を変えて実験ができませんので引き出しの線は線は相当長くしておいて下さい。取り付け位置が決まってから、引き出しの線を最短に切ります。電源トランスはひっくり返したりしているうちに端子がシャーシーとショートしたりすることがあり、また、うっかり高圧端子に手が触れて感電することがありますので注意が必要です。

 検波回路 アンテナコイルは、使うバリコンの容量によって巻き数が変わります。私は、LCメーターを使っていますので「何回」巻くより「容量は何μH」の方がわかりやすいのですが。とにかくLCメーターは超便利です。参考までに直径25mmのボビンに巻いたデーターを示しておきました。
 さて、並四ラジオの魂をいれる再生コイルの調整ですが、最初はカソードコイルを30回と多めに巻いておきます。50kΩのボリュームを回しながら再生のおき方を調べます。私の実験では、30回では再生がかかりすぎてボリュームの位置を最小にしてもピーギャーがとまりません。それで、カソードコイルを10回ほどいてみました。しかしこれでも再生がかかりすぎて、結局20回ほどいてしましました。つまりカソードコイルは、10回巻きになりました。これでボリュームの半分位回したところで再生がかかりはじめます。再生検波ラジオでこのカソードコイルの巻き数の1ターン、2ターンというところで再生のスムーズなかかり方が決まります。コイルの容量の小さい短波コイルの調整に当たっては、二分の1巻き、三分の1巻きが勝負の決め所になりそうです。周波数が低いところはやや再生がかかりにくくボリュームを深くまわさなければなりません。ということは、あまりカソードコイルの巻き数が少ないと周波数の低いところでは再生がかからなくなってしまう心配があります。この再生のかかりかたは使う再生検波管によって異なります。同じ型番の真空管のでも違いがあるくらいデリケートなものです。
 この道の大ベテランJA1AMH高田さんの著書では、再生をかけない状態、つまり、カソードを直接アースした状態で、再生ボリュームを回しグリッド検波の状態で最高感度となるボリュウムの位置に印をつけておき(スクーリングリッドの電圧を記録しておけばよいのでしょう)、ここで再生がかかり始めるようカソードコイルの巻き数を決めるのがコツと書いてありました。なるほど検波管が最良状態で動作するとき再生をかけて一層感度を良くしようということなのでしょう。再生検波ラジオに魂をいれるノウハウを紹介しました。

 その他の調整 その他の調整として低周波増幅段が結構ゲインがあるので可聴周波数外で発振していないか確認しましょう。念のため出力トランスに0.001μF程度を入れておきましょう。このようなストレートラジオは帯域が広く高域ののびがいいといえば良いところですが混信の原因にもなるのでバンドパスフイルタを入れたいところです。電気街で2mmHのチョークがありましたので出力トランスの後に入れてみました。このチョークの本来の目的は、スピカーユニットのウハー用の高域を切る目的で作られたようです。ただ混信のないBC帯ラジオにフイルターをいれて見ても高音がカットされるだけで不必要かもしれません。オーディオフイルターの活躍は、アマチュア無線バンドのような激しい混信あるところでしょう。
 6BA6の後ろに簡単なオーデオフイルターを入れると効果があるかもしれません。トランジスター用段間のトランスでいいフイルターが出来ないか研究してみます。

3 雑感
 
 さて、完成した並4ラジオを聞いていますと、再生検波はあまりいい音とはいえません。これで昔は「君の名は」などを聞いていたのかな−−−と懐かしさはありますが。おまけにスピーカーは、マグネチックスピーカーで、低域はまったく出ていなかったはずです。そういえば我が家に5球スーパーラジオが持ち込まれたのはいつの頃だったでしょうか。スーパーラジオのそしてパーマネントスピーカーの音は、子ども心ににも「いい音だ!」と感激したものでした。レコード端子もついていて、SPレコードの音もこんなにいい音がするものかと感心したものでした。いい音が生活の中であふれる昨今、再生検波ラジオの音は、幼い頃の生活を思い出す音でもありました。