実践 古いラジオのリペア編
筆者  ラジオおじさん  JA8ATG  原  恒 夫


1 初めてのヨーロッパ
  結構海外に出かけてはいるのですが、アジアばかりで他の地域へは旅行をしたことがありませんでした。ある時所属している団体の派遣で、初めてヨーロッパ、ブルガリアを訪問することが出来ました。アマチュア無線関係の集まりでしたので、現地のハムに、
「ソフィアにハムショップはありますか?」
と訪ねると、
「ないよ。無線機はドイツから輸入しているよ。」
とのことでした。
「でも部品屋さんは、一軒あるよ。」
と親切に地図を書いてくれました。仕事の合間をぬって路面電車を乗り継いで、その部品屋さんに行ってみました。部品屋さんはすぐ発見できましたが、ラジオや無線関係の部品はまったくありませんでした。通りをあるいているうちに一軒のリサイクルショップを発見しました。リサイクルショップと言っても、古い電気器具を天井まで積み上げた「雑品屋さん」でした。「雑品屋さん」は死語でしょうか。リサイクルショップのように汚れをふいてきれいに展示してあるのでなく、ゴミのように積み上げてあるのです。ありました。ラジオが10台以上もあちこちにみえているのです。1台を指さして、
「HOW MUCH?」と店の人に尋ねると、紙に20US$と書いてくれました。大きい方のラジオを指さすとやっぱり20US$と書いてくれました。ラジオはどれでも20$らしいのです。
「安い! 2,000円か!!」と喜びましたが、さすが手荷物には限界があります。そこで、一番小型の一台を買いました。

2 リペア開始

 はるばるブルガリアから中古ラジオを買って来たのにはおばさんも呆れていました。幸いケースも壊れることなく無事持ち帰ることが出来ました。早速220Vの電源トランスを用意してラジオのスイッチを入れてみましたが、電気は入りません。
「やっぱトランスレスは、真空管が切れていることが多いからな」
期待はずれにがっかりしましたが、気を取り直して裏蓋を開けてみました。中はほこりの固まりでです。メーカーは、オランダのPhilips製4球2バンドスーパーラジオです。コイルの類もCR類もみんな焦げてとても修理は出来ないと判断しました。
「よーし、ケースとシャーシーだけ活用して、作り直そう」
ということにしました。結局「リペア」ではなく新しい部品を使って作り直しにしました。先輩の皆さんが、昭和初期のラジオの一つ一つの部品を修復しながらリストアされていますが、私にはそのような技術がないので、安直に部品を取り替えてしまうという方法をとりました。

 シャーシーの大きさ、ケースの大きさからみて6BE6、6BA6、ダイオード検波、6BM8(複合管)の3球スーパーとする事にしました。部品は、殆ど使えそうなものはありません。唯一バリコンがなんとか使えそうですが、回して見ると何処かで羽がショートしているようです。
「これは手強そうだ」
と思いましたが、なんとか羽を調整してショートする部分は直せそうです。早い話が、新しいバリコンに取り替えるとバリコンの台をシャーシーに合わせてつくるのが面倒だったからです。バリコンのほこりはよく取って、ぶつかっているところを直さなければなりません。

開いている穴を最大利用します  部品を取り付けて見ます 最終的な部品配置が決まりました


 このバリコンの最大容量は350pF位です。これに合わせてアンテナコイルとOSCコイルを巻きました。配線は、電源部分から始めましたがもともとトランスレスに電源トランスを載せようというのですからシャーシーの面積に無理があります。3球でまとめるということで電源は、WEB SHOP 「ラジオ少年」の40mAのものを使用しました。この容量は、本当にぎりぎりの容量です。電解コンデンサーは、熱源から離すためにとんでもなく離れたところに置きました。困ったのはボリュームで、延長シャフトを付けなければつまみを付けられません。真空管のソケットもシャーシーの中に付けたり上に付けって見たりしましたが、結局上に付けることにしました。OSCコイルは、得意のトロイダルコアに巻き、バッテングコンデンサーは、手持ちがないので固定のスチロールコンデンサーにしました。局部発振の周波数は、結局コイルの巻き数をカットアンドトライが必要でした。
 アンテナコイルですが、最初はソレノイドコイルを付けたのですが、感度不足でバーアンテナにしました。バーアンテナは、コイルの位置を動かすと容量が連続的に変わって単一調整がとても楽です。バリコンの羽のショートはなかなか場所がわからず時間がかかりました。羽を1枚1枚すかしてみて狭くなっているところを等間隔になるよう根気よく修正します。


3 調 整

 調整は、他のページの5球スーパーや7石トランジスターと同じです。一番大切なところは、OSCコイルの発振周波数の微調整です。これは、計算値ではなかなかうまく行きません。デイップメーターで周波数を確認しながら1000kHz〜2100kHz位までが発振するようOSCコイルを調整します。発振周波数が低いときは、OSCコイルをほどいていけばよいのですが、高いときは、臨時に半田で線をつなぎ足して1〜2ターン巻き数を増やします。後で調整後の巻き数を新しいコイルできれいに巻き直して下さい。

羽のショートを完全に直します OSCコイルに巻いた白い線は、巻き足したもの 結局バーアンテナをバリコンの上にくっつけた


4 完 成

 やっと完成しました。結局使ったのは、ケース、シャーシー、バリコンだけでした。糸かけがどうなっていたか覚えていなかったので時間がかかってしましました。ダイヤル糸も重要なパーツでした。この糸によってスムーズにダイヤルプリーを回せるか決まります。ダイヤル糸もWEB SHOP 「ラジオ少年」のものを使いました。バーアンテナに取り替えたせいもあり感度は抜群です。音質もまあまあです。スピーカーのネットがあまりにも汚かったので洗濯しましたら、繊維がばらばらになってしましました。新しいものに取り替えなければなりません。
Philipsのラジオも生まれ変わったのでした。