実践テストオッシレーターの製作
筆者 ラジオおじさん JA8ATG 原  恒 夫

1 とにかくデ-ターを取ってみます
 BC帯専用の540kHzから1620kHzまでのテストオッシレーターの製作にトライしてみました。欲を言えばIFTの調整もできるように455kHzまで低い方を延ばしたいのですが可能でしょうか。
安易にLC発振を考えています。回路は「トロイダル・コア活用百科」山村英穂著(CQ出版)のトロイダルコアの特性を調べるために使った回路(p34)を使いました。2SK19を使った自励発振です。もう相当に古いFETですから新しい型番のFETを使った方が良いでしょう。電源は006Pで、ツェナーなど入れずに発振させていますので電池が消耗してきて電圧が下がると周波数が変わるかもしれません。コイルのはアミドンのFT82#43に巻きました。最低発振周波数を450kHzと考え、230pFのポリバリコンとの組み合わせで、概算でコイルのインダクタンス1500μH〜1600μHは必要でしょう。コイルは、0.5mmのホルマル線を37回巻きました。これでコイルのインダクタンスは1520μHになりました。ソースのタップはアース側から6回目としました。


 早速適当なプラスチックケースを探して組んでみました。蓋の部分が柔らかいプラスチックだったので、ポリバリコンはアルミ板で補強して取り付けました。デイップメーターで発振周波数を大まかに調べてみますと、どうも455kHzは無理で、550kHz以上の発振周波数のようです。上は1400kHzあたりまでのようです。予想より少し可変範囲が狭いようです。
 デジタル式の受信機で(本当はアマチュア無線用のトランシバーの受信部ですが)正確に発振周波数を調べてみます。
 オッシレーターのポリバリコンを回して見ますと、強力な信号が受かりました。電信モードでチェックしているので、ビートが聞こえます。そこでこのオッシレーターに手を近づけるとビート音が変わって発振周波数が動いているのがわかります。
「間違いなくこのオッシレーターの電波だ!」
これでおじさんの作ったばかりのオッシレーターの信号であることを確認できました。プラスチックケースに入れたにもかかわらず、人体による周波数の変化は1〜2kHz程度のようです。

バリコンはアルミ板で補強しました Cは230pFのポリバリコン 受信機で発振周波数を確認しました


2 発振周波数を書き込みます
 受信機の周波数を見ながらオッシレーターの発振周波数を書き込んで行きます。ポリバリコンの最大容量の位置で、540kHzで、それ以下はどうしても下がりません。IFT調整用の455kHzまでは下げることは出来ないようです。600kHz、700kHz、800kHz、900kHz、1000kHz、1100kHz、1200kHzと校正しながら目盛りを入れていきます。高い周波数に来ると目盛りが詰まってきます。周波数直線バリコンでなく100円のポリバリコンなのでしょうがありません。1300kHz、1400kHzと周波数は上がってきましたが、1500kHzまではのびないようです。ポリバリコンを回し切った状態で1470kHzがこのコイルとバリコンの組み合わせでは限界でした。

発振周波数を書き込みました

3 周波数の再現性はいかに?

 昼食をとって、再び午前中に書き込んだテストオッシレーターの目盛りと周波数のずれを確認してみました。鉛筆で書き込んだ周波数に合わせて電波を出してみます。受信機で540kHz、600kHz、700kHz〜1470kHzまで目盛りに合わせポリバリコンを回してみますとこれが結構正確な周波数が出ています。精度は±5kHzというところです。
「これならラジオの単一調整に使えるぞ!」
おじさんは満足して、コーヒーを飲むことにしました。
 コーヒーを飲んで15分ほどして、再び発振周波数を確認してみますと、やはりほぼ±5kHzの精度は確保できます。しかし、±5kHzということは、最大で10kHzの誤差が出るわけです。これでは、コイルを巻き足してIFT調整用に455kHzが出るようになっても少々誤差が大きすぎるようです。自励発振の限界でしょうか。IFT調整用の455kHzは正確な周波数が必要ですので、水晶発振やセラロックにやらせましょう。それから、ただ発振させただけですから無変調です。ピーとかブーとか信号に変調をかけたいですね。
 そう思い出しました。昭和36年にアマチュア無線局を開局した時は、真空管でしたがほぼこの回路で3.5MHz帯の原発振のVFO(送信機の発振周波数のもとになる発信機)を作り、10Wに増幅して3.5MHz、7MHz、21MHz等で振幅変調で電波を飛ばしていました。そのころは、やっと100kHz単位で周波数がわかる位の受信機でしたから周波数の変動に気が付きませんでした。少なくてもこの発信機位の周波数変動はあったはずです。

続く