おじさんのラジオ製作教室
筆者 ラジオおじさん JA8ATG 原恒夫
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23 | 実践ラジオ製作のための小さな工夫 |
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25 | 実践ICラジオ(イヤホンタイプ)の製作 |
26 | 実践ヒーター電圧の微調整の工夫 |
27 |
ラジオ製作のアイデア |
リンク |
JA8ATGホームページ |
WEB SHOP 「ラジオ少年」 |
1 はじめに
先輩のみさんの「ラジオの製作」に関するすばらしいホームページを拝見して私も10代の頃に夢中になった「ラジオづくり」に再び挑戦してみました。おじさんのラジオ少年時代を懐かしく思い出しながらの製作です。幸い父が「ラジオ」に関心があり、身の回りには真空管や部品がころがっていました。小学校低学年から「ラジオ」に興味を持った私は、杉本哲先生の「初歩のラジオ」が教科書でした。しかし、小学校低学年には、旧漢字も混ざったこの教科書は漢字が読めず困ってしまいました。母に「この漢字なんて読むの。意味は?」と質問しても漢字はなんとか読んでくれるのですが、「分離?なのことかしら?」とまともな返事が返ってこないのでした。
3年生の冬休みに父と「並3ラジオ」を作ることになりました。早速父が「科学教材社」に送金して、「並3ラジオキット」が雪深い北海道の我が家まで届きました。父と私は大喜びで小包を明け早速組み立てを開始しました。ところが卵ラグが1個も入っていないのです。
「待てよ。ひょっとして小包を明けたとき、くるまっていた新聞と一緒にストーブに入れて燃やしてしまったかもな!」
父の予想のとおり卵ラグは、マキストーブの灰の中に発見できました。
「いいよ。俺が明日深川(北海道深川市)のラジオ屋さんに行って買って来るから。結局父は、バスに乗って2時間近くかけて、近くの町のラジオ屋さんで卵ラグを20個ほど買って来てくれました。そんなラジオ製作にまつわる出来事を思い出しながら今日もおじさんはラジオ作りを楽しんでいます。
2 部品が手に入りません
ところが最近はラジオ作りに必要な部品が手に入りにくくなりました。また、手に入ったとしても信じられないほど高価でおじさんのような年金生活者、いえ、ちゃんと月給を取っている方でも手が出しにくくなりました。勿論青少年の皆さんのお小遣いでは、とても賄いきれないでしょう。
そこで、長年アマチュア無線をやってきた経験を生かして、代用品(代わりになるような部品)を開発することとしました。
このHPをご覧の先輩の皆様にお願いです。私はこんな工夫をしているというアイデアをお教え願えませんか。皆さんにご披露したいと思います。
(1)代用品あれこれ
アンテナコイル 通販でゲルマラジオ、並3ラジオ、5球スーパー用コイルが手に入ります。しかし、高価ですね。とても手が出ません。早速手作りを試みてみました。
ゲルマラジオ用アンテナコイル 実に簡単、直径25mm〜30mmの塩ビパイプ(または、同等のパイプ)に0.2mmのホルマル線を巻きます。注意することは使うバリコンの容量によってコイルの容量(巻数)も変えなければなりません。
配線の仕方、部品の配置で回路の浮遊容量が多少は違いが出ますが、BC帯(540kHz〜1620kHz)では、ほとんど気にする必要は無いようです。
160pFのポリバリコン 巻き数 235回 540μH |
230pFのポリバリコン 巻き数 180回 350μH |
290pFのエアーバリコン 巻き数 135回 275μH |
430pFのエアーバリコン 105回 200μH |
表1にバリコンの容量とコイルの容量(巻数)を実測により示してあります。参考にされて下さい。
私が所属する「札幌ジュニアアマチュア無線クラブ」の小学生から高校生に実際にコイルを巻いてもらいましたが、アンテナコイル1個を手巻きで完成するには、1時間はかかっていました。コイル巻のコツは、ホルマル線を柔らかい布でしごきながらゆるまないようにセロテープなどで止めながら作業をすることです。
おじさんは塩ビパイプが加工しやすいのでよく利用しています。塩ビパイプの欠点は熱に弱い事ですが、結構半田付けの熱に耐えてくれます。塩ビパイプには、肉厚の水道パイプ用と電気配線用の肉薄のタイプがありますので、好みのものを選んで下さい。
アンテナを取り付けるアンテナコイルのアース(E)側は、同調コイル側(上)で、A側(アンテナ端子)は下になります。巻方向は、同調コイルと同じ方向に巻きます。
並3用アンテナコイル ゲルマ用アンテナコイルと違うところは、同調コイルの上に再生コイルを巻かなければなりません。ただ、実際に0−V−1などを作ってみますと、再生コイルを同調コイルの下に巻いてカソードタイプにする方が再生がスムーズにかかるようです。再生のかかり具合がいいということもありますが、コイルの構造が簡単になる、再生バリコン(豆コン)を使わなくて済む等の利点があります。という訳でおじさんはカソードタイプを好んで使っています。
スーパー用アンテナコイル ゲルマラジオ用と全く同じです。アンテナコイルをハイインピーダンスタイプを作ろうとしましたがハニカム巻がどうしても出来ず、完成しませんでした。そこで、トランジスターラジオ用のバーアンテナを使ってみました。バーアンテナは感度もあがり最高です。おまけにコイルの位置を動かすと、コイルの容量が大幅に変化してくれます。
これで、多少容量の異なるバリコンを取り替えてもコイルの位置を動かすと簡単に同調範囲を540kHz〜1620kHzのBC帯に入れることが出来ます。もう一つスーパーラジオは、局部発信の周波数と同調回路の同調周波数が絶えず455kHzの差になっていなければいけないのですが、バーアンテナの場合、コイルの位置を動かすことによって簡単に455kHzの差に(単一調整)することが出来ます。筒に巻いたコイル(ソレノイドコイル)で、巻数でしか容量を変えられないのでこの単一調整(英語ではトラッキング)がとても難しいのです。
コイルが左端で250μHで中央まで移動すると330μHまで容量が連続的に変化する |
調整のコツは、500kHz〜600kHzの低い周波数の放送を受信して、バーアンテナのコイルを動かし、放送が最も良く大きく聞こえるところに固定します。高い周波数はの調整は1400kHz〜1600kHzの放送を受信しながら、同調コイル側のバリコンのトリーマーを最大感度になるよう調整します。
様々な5球スーパーラジオの同調周波数をディップメーターで確認してみますと、局部発信の周波数と同調回路の周波数がうまく455kHzの差になっていません。これがスーパーラジオの感度を上げられない原因になっているようです。通信用受信機では、感度と選択度をを良くするため、局部発信のバリコンとアンテナコイル側(同調コイル)のバリコンを別々なバリコンを使っているものがあります。広い受信周波数では、絶えず正確に455KHzの差を作るのが困難なためでしょう。しかし、バリコンを別々にするとつまみを2つ回す必要がありますね。
スーパー用局部発信コイル(OSC)コイル これも市販品はハニカム巻になっていて小型で浮遊容量が小さくなるように作られています。ハニカム巻は、おじさんには手に負えなくて作れません。そこで、では簡単に作られる筒に巻いたソレノイドコイルでは実用にならないのでしょうか。実験してみましょう。浮遊容量が大きいと高い周波数まで伸びてくれない心配があります。
TRIOのコイルセット | 手巻きのOSCコイル | 容量可変のOSCコイル |
おじさんの好きな塩ビパイプ直径27mmに0.2mmのホルマル線を巻いてみました。結果は、少なくともBC帯(540kHz〜1620kHz)では、全く問題がありませんでした。ハムフェアで買った5球スーパー用アンテナコイルと局発コイルのセットで1500円でしたが、ソレノイドコイルで済むなら簡単に自作出来ます。でもハニカム巻のように幅5mmくらいに小型にはなりません。(写真
)
ソレノイドコイルにダストコアを入れて発信周波数を可変出来るようにしてみました。(写真 )今は、適当なダストコア付きのボビンが売っていませんので、転がっていたコアを接着剤を使ってビスにくっつけました。金具は、なんと新品のボリュームをこわして作りました。4mmのビスの下をカナノコでひいて溝をつけドライバーで回せるようにしました。ボリュームが犠牲になるのでお勧め出来ない方法ですが、ガリューム(回すとガリガリ雑音の出るようになったボリューム)を捨てないで取っておいて利用するならよいでしょう。
トロイダルコアに巻いたOSCコイル | 右上が空中配線のトロイダルコアOSCコイル |
次に、小型にするためフェライトコアに巻いてみました。これが巻数も少なく小型に出来るので自作にぴったりです。
フェライトコアは、アミドンのFT82−43、または、その一つ大きいサイズのFT114−43が良いようです。AL値の低いコアは、コイルを沢山巻かなければならず手数がかかります。そうかと言ってあまりAL値の高いコアに巻くと、巻数1回の容量の変化が大きすぎて、微調整が出来ません。#43コア当たりがちょうど良いようです。
AL値の他に注意することは、あまり小さいコアに巻くと容量は取りやすいのですが、どうしてか異常発信をしてしまいました。
また、メーカー不明のコアで温度変化と共に大幅に容量が変わるコアがあり、このように容量の変化してしまうと大事な発信周波数までどんどん変化して、受信周波数も動いていつの間にか聞いていた放送が聞こえなくなってしまいます。
このフェライトコアのOSCコイルですが、本来は発信周波数を安定させるため、がっちりシャーシーに固定しなければならないんですが、0.5mm〜1mmのホルマル線でなんとか自立出来ています。空中配線でもBC帯であれば問題がないようです。
(2)部品を安くする方法
部品を使わないこと 当たり前の事ですが、部品を使わなければお金はかかりません。トランスレスにする他の作戦を練ってみましょう。まず値段が高いのと手に入りにくいのが、バッテングコンデンサーです。使わないようにするには固定コンデンサーにするか430pFバリコン使用の場合はバッテングコンデンサーの代わりに400pF程度のコンデンサーを入れて様子を見ます。発信周波数が高いようなら20〜30pFのコンデンサーを400pFに並列に入れてます。小容量のコンデンサーを並列に入れて発信周波数を微調整していきます。
発信周波数が低い場合は、400pFを300pF位に取り替え様子をみます。そして、前述にように少しずつ小容量のコンデンサー並列につなぎ微調整しながら追い込みます。
バッテングコンデンサーを使わない方法がもう一つ方法があります。親子バリコンを使うことです。親子バリコンはスーパーラジオ用に開発され、高価な部品であるバッテングコンデンサーを省略出来るようにした優れものです。親子バリコンはメーカーによって多少の設計が異なっていますが、概ね容量の比が1対0.5位になっています。例えば標準的な430pFのバリコンであれば、小さいセクションの容量は200pF前後です。新しくバリコンを買うなら親子バリコンを買いましょう。
標準の2連バリコン | 親子バリコンです | 手に入りにくいバッテングコンデンサー |
「私は、手持ちの普通の2連バリコンを使います。」という方は、バッテングコンデンサーの代わりに100円〜200円のポリバリコンが代用出来ます。ポリバリコンは、せいぜい300pfFしか容量がありませんので、100pF〜300pF位のコンデンサーを並列に入れてやります。ポリバリコンの軸は、シャーシーに触れないよう大きめの穴を明け取り付けます。ポリバリコンの軸には2.6mmの短いビスをきつく埋め込んでおくと単一調整をする際、ドライバーでポリバリコンを回せるので便利です。
トランスレスで経費を抑えるのも結構なことだと思います。ただおじさんはどうしても電源プラグの差し込み方によってビリビリ感電するのがいやでトランスレスは作りたくありません。電気工作は好きですが、感電は嫌いなのです。
では、経費を安くするにはどうするか?答えは簡単で、物価の安い海外から輸入することです。ある日おじさんはおばさんに相談なしでトランスを山盛りタイから航空貨物で輸入しました。段ボール箱22個、重さがなんと700kgもあったのでおばさんはすっかりお冠ですが、おじさんは大ニコニコ。
タイトランス社に特注して届いたチョークコイル、電源トランス、アウトプットトランス |
「これから真空管ラジオを山盛り作るんだ!」とおじさんは宣言しました。全国のラジオ製作愛好家の皆さんにもお分けしますよ。価格は、送料をかけても概ね国内製品の半値です。東南アジアと言っても、パソコンの部品がほとんど東南アジアで作られているように品質も管理もとても高いレベルにあるのです。決して国産品に負けませんよ。
真空管用IFTは、これもハニカム巻になっていて、小さいスペースに大きな容量のコイルが巻いてあってお手上げです。トランジスタ用のIFTを直流を流さないように使ってみましたが、インピーダンスが低すぎるのか感度が上がりません。台湾で真空管用のIFTを作っている会社があると聞いていますが、どなたか作っている会社をご存じの方はいらっしゃいますか。おじさんは仕方なく少し高いのですがアメリカから輸入して使っています。将来は少し研究して自作の道はないか探ってみます。皆さんもIFT自作に良いアイデアがありましたら教えて下さい。
真空管ラジオといいながらおじさんは整流はシリコンダイオードを使っています。何百円もする整流管を使うのがもったいないという理由ですが、本当の真空管ラジオではなくなるという指摘を受けそうですね。お陰で整流管のヒーター電力を節約出来ますがこれは無理につけた「こじつけ理由」です。「電気を節約するなら全部半導体にしたら」と言われてしましますね。
(3)ラジオ作りに必要な測定器
皆さんはどんな測定器をお使いですか。おじさんはハムなのでアマチュア無線関係測定器を使っています。
アマチュアですからまったくささやかな測定器ですが−−−−。
テスター アナログテスターです。台湾製で1,000円の超安物です。ラジオの調整にはアナログの方が使いやすようです。と言いながらデジタルテスターも置いてあります。これもタイ製の1,000円の物です。
LCRメーター コイルの容量、コンデンサーの容量を測定しています。これもタイ製の6,000円の安い物です。浮遊 容量をキャンセルするゼロ設定ボリュームがついてないので超短波のコイルや10pF以下の小容量のコンデンサーの測定は誤差が多くてつかえません。しかし、ジャンクボックスに転がっている容量不明のコイル、バリコン、コンデンサーの容量をデジタルで表示するのでラジオ製作には欠かせない測定器です。これで製作記事のとおりのコイルボビンやホルマル線をそろえる必要がなくありました。有る物を適当に巻いて、このLCRメターでインダクタンスを測定しながらカットアンドトライします。正にアマチュア流です。
デイップメター デジタル周波数計がついた三田無線のアマチュア無線用の物を使っています。コイルを自作する方には必需品です。同調回路、発信回路の周波数が直読できますので超便利です。受信機のIFTの調整、感度調整などには信号発生器として利用できます。
おじさんの測定器は、これだけ、たったの4台です。いつかプロ用の無線機テスタ−(カウンター、SG、変調度計、パワー計などがコンパクトに1台にまとまった超便利な測定器)がほしいので、秋葉原の中古ショップを覗いてみました。中古でも40万円前後もします。新品はゼロの数字を数えないと分からないような金額で、おじさんのような年金生活者にはとても手が出ません。
左からアナログテスター・デジタルテスター・ディップメーター・LCRメーター |